中比、南シナ海で衝突激化=習政権「包囲網」に危機感 2024年03月31日 14時28分
【北京時事】中国とフィリピンが領有権を争う南シナ海での衝突が、過去1カ月間で激しさを増している。中国の習近平政権は、フィリピンの背後に控える米国の存在にいら立ちを強め、日米比による対中包囲網強化と対抗するため、オーストラリアや欧州との関係改善を急いでいる。
「米国の介入が(南シナ海の)混乱を最もあおっている」。中国国防省報道官は3月28日の記者会見で、フィリピンが米国を後ろ盾に「虚偽情報を広めている」と強弁した。
3月5日、フィリピンが実効支配し中国も領有権を主張するアユンギン(中国名・仁愛)礁近くで、中比の船舶が衝突し、比側の乗組員が負傷した。21日には中国海警局が、南沙(英語名スプラトリー)諸島の鉄線礁に比側の34人が上陸したと非難する声明を発表。23日にはアユンギン礁付近で、中国海警船が比船に放水銃を発射し、再び比側に負傷者が出た。
一連の衝突で、米国は同盟国フィリピンを支持し、米比相互防衛条約の発動を示唆して中国をけん制。3月19日にはブリンケン米国務長官とマルコス比大統領が会談し、「南シナ海における国際法順守」に共同で対処すると強調した。
マルコス氏は、中国と国境紛争を抱えるインドにも接近。3月下旬にジャイシャンカル印外相をマニラでもてなし、防衛や海洋分野での協力拡大で合意した。
日米比3カ国は4月、ワシントンで首脳会談を開く。フィリピンとの「準同盟」化を視野に入れる日本は、安全保障面での連携強化に前向きで、年内に南シナ海で3カ国合同の警戒監視活動を行うとも報じられている。フィリピンは習政権が統一をもくろむ台湾に近く、南シナ海問題で西側諸国が結束を固めれば、中国による台湾侵攻への抑止力となり得る。
危機感を強める習政権は3月下旬、王毅共産党政治局員兼外相を豪州に派遣。貿易拡大を掲げ、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」への揺さぶりを図った。中国商務省は豪州産ワインに課していた高関税の解除も発表した。
習国家主席は3月27日、対中半導体規制を進めるオランダのルッテ首相と北京で会談。ルッテ氏から、経済や先端技術分野で中国との「デカップリング(分断)」とは距離を置くとの発言を引き出した。近くドイツのショルツ首相の訪中のほか、習氏のフランス訪問も取り沙汰されている。