日本の経済支援は不可欠=ウクライナ、汚職対策カギ―JICA専門家 2024年04月01日 14時56分
ロシアのウクライナ侵攻は2年が経過し、長期化の様相が強まっている。金融改革の専門家として国際協力機構(JICA)から派遣されている田中克ウクライナ財務相アドバイザーは1日までにインタビューに応じ、「軍事支援ができない日本にとって、ウクライナがロシアに経済で勝つよう支援をすることが大きな命題だ」と強調した。日本企業がウクライナと関係を深める上で、同国が旧ソ連圏の汚職体質から脱することがカギになると語った。
田中氏は、欧米のウクライナに対する支援疲れが広がる中で、2月の日本の支援額が国別で首位だったと指摘。「日本がウクライナの経済支援をちゅうちょすれば、同国は経済でも打撃を受け、ロシアを利する」と訴えた。
日本では2月、日ウクライナ経済復興推進会議が開かれ、多くの日本企業が参加した。ただ、企業の動きは今のところ鈍い。日本政府がウクライナの危険情報で原則として「退避勧告」を出しているためだ。安倍政権下で対ロ投資を後押しした政府の方針が、ロシアのウクライナ侵攻後に一変したことで、「企業の日本政府に対する不信感が強い」(関係者)ことも背景にある。
ただ、ウクライナは水素エンジンの開発など、軍事産業から発展した優れた製造業やIT技術を持つ。田中氏は「今は軍事需要があるが(停戦によって)需要がなくなれば、技術は中国やロシアに渡ってしまう」と懸念。「精密機械に強い日本がウクライナと組めば(技術流出の)防波堤になるし、共存共栄の関係になれる」と強調した。
ウクライナに残る旧ソ連圏の汚職体質の改革も課題だ。ただ、汚職摘発を専門に担う捜査機関などが対策を強化し、国際NGOが公表した2023年の「清潔度」は180カ国・地域中104位。22年の116位から改善した。
田中氏は「日本企業はウクライナをよく知らないし、地理的に遠いことがネックだ」と認める。一方で、ウクライナ経済は潜在力を秘めており、両国の結び付きは「これから良くなる」と期待感を示した。