ネタニヤフ首相、内政で危機=超正統派徴兵巡り政権亀裂―イスラエル 2024年04月01日 18時18分
【カイロ時事】イスラエルのネタニヤフ首相が政権維持で難しいかじ取りを迫られている。長年問題視されてきたユダヤ教超正統派の徴兵免除を巡って政権内で意見対立が噴出。対応を誤れば、政権崩壊につながる恐れもある。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスとの戦闘を続ける中、徴兵免除への強い不平等感が社会に広がっている。
徴兵免除について、最高裁は3月31日までに是正策を提出するよう政権に求めていたが、その期限を過ぎた。最高裁は、徴兵を免れている超正統派の宗教学校生への補助金を4月1日で停止する暫定措置を命じる一方、ネタニヤフ政権に今後の措置について1カ月間の猶予を与えた。「落としどころ」を見つけられなければ、徴兵免除が廃止される可能性がある。
イスラエルは「国民皆兵」で男女とも18歳で徴兵される。だが、ユダヤ教の戒律を厳格に守る超正統派の宗教学校生はその義務を免除され、学業を支援する補助金も受け取っている。徴兵免除はホロコースト(ユダヤ人大虐殺)で危機にひんした宗教的伝統を守るための措置で、イスラエルが建国された1948年から続く。
報道によると、建国当時約4万人(人口の約5%)だった超正統派の人口は、高い出生率を背景に約120万人(同約13%)に拡大。この1年の免除者は約6万6000人に上るとされ、世俗的な市民からは「平等な徴兵負担は国家と社会の存続にとって不可欠だ」(監視団体「イスラエルの質の高い政府を求める運動」)との批判が高まっている。
ネタニヤフ政権には超正統派の2政党が参加。連立離脱を示唆しながら、徴兵免除継続のためにネタニヤフ氏に圧力をかけてきた。他方、ネタニヤフ氏が党首を務める右派リクードのガラント国防相や戦時内閣入りするガンツ前国防相は、超正統派も兵役に就くべきだとの立場を崩していない。
超正統派2党が離脱すれば政権は少数与党に転落。解散総選挙になった場合、支持率が低迷するネタニヤフ氏が政権を維持するのは困難とみられている。
エルサレムでは3月31日、首相退陣を求める大規模なデモが行われた。ハマスが拘束する人質解放交渉が進まないことへの反発に加え、徴兵問題もやり玉に挙がった。デモ隊が超正統派地区の住民と衝突する事態に発展した。ネタニヤフ氏は同日の記者会見で「問題は解決できる」と語ったが、先行きは見通せない。