イスラエルが異例の攻撃、対立先鋭化=大使館空爆でイラン反発 2024年04月02日 21時31分
【イスタンブール時事】イランの在シリア大使館敷地内へ1日、イスラエルが発射したとみられるミサイルが撃ち込まれ、イランの精鋭「革命防衛隊」の司令官や副官らが殺害された。イスラエルがこれまで隣国シリア領内で繰り返してきたイラン関連の軍事施設への空爆と異なり、在外公館を狙った異例の攻撃。パレスチナ自治区ガザでの戦闘を機にさらに激化したイスラエルとイランの対立は一段と先鋭化しかねず、緊迫の度合いを増している。
「シオニスト政権(イスラエル)は、無分別な暗殺では邪悪な目的を達成できない」。イランのライシ大統領は2日、イスラエルを痛烈に糾弾した。アブドラヒアン外相も2日のX(旧ツイッター)の投稿で、イランと国交がない米国の利益代表を務めるスイスの代理大使を呼び、「敵によるテロ攻撃と犯罪の次元を説明し、シオニスト支援者である米政権に重要なメッセージを伝えた」と抗議した。
イランが支援するイスラム組織ハマスとの交戦に終結の見通しが立たず、イスラエルはハマスに呼応する「抵抗の枢軸」と呼ばれる親イラン勢力の攻撃にも連日さらされる。特に、ハマスより軍事的に強大なレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、イランの後ろ盾でイスラエル領内へ砲撃を強化。ガザで対ハマス壊滅に注力したいイスラエルにとっては、ヒズボラの脅威は兵力分散を強いられ、戦線拡大のリスクをもたらす懸念材料だ。
イスラエルは公式には関与を認めないレバノンやシリアへの越境攻撃で、ハマス幹部やヒズボラ司令官、革命防衛隊の上級顧問らを次々と殺害してきた。ガラント国防相は先月下旬、「ヒズボラへの防御から追跡に転換する。ベイルートでもダマスカスでも、どこでも作戦を行う」と言明していた。
ダマスカス中心部にあるイラン大使館を狙った前例のない攻撃は、イスラエルの強固な決意を誇示した形となり、ガラント氏は2日、イランなどに直接言及するのは避けつつも「中東全域でわれわれの安全を脅かせば、誰であってもその代償が高くつくことを明確にする」と語った。だが、報復を誓うイランの対応次第では暴力の応酬を招き、戦闘が中東各地へ波及する危うさをはらんでいる。