対ロ協力、かじ取り苦心=制裁リスク回避の動き―中国 2024年05月16日 18時14分
【北京時事】中国の習近平国家主席は16日、ロシアのプーチン大統領を40回以上会談を重ねた「旧友」と呼び、両国の「世代を超えた友情を強固にし続けよう」と訴えた。米国との対抗上、中ロの「蜜月」を演出する習氏だが、ロシアと一蓮托生(いちれんたくしょう)となり米欧の制裁を受けるリスクは回避したいのが本音。ウクライナ侵攻が3年目に入りロシアの国際的孤立が深まる中、習政権は対ロ外交のかじ取りに苦心している。
「中国が対ロ支援を続けるのなら追加措置を取る」。4月下旬、訪中したブリンケン米国務長官は中国側にこう警告した。米欧は、中国が半導体など軍民両用の製品輸出を続け、対ロ制裁の抜け穴をつくっていると批判。バイデン米政権は、中ロ間の「通常の貿易活動」と強弁する習政権に業を煮やし、対ロ支援に関与した中国の銀行をドル決済網から排除する強力な制裁案を示唆する。
中国の銀行は既に「守り」に入っており、今年になってロシアとの決済を相次ぎ停止。中国人民大のシンクタンク報告によると、3月までに中ロ間決済の約8割が止まった。ロイター通信は、一部の中国企業が貿易決済を国境近くの為替ブローカーに頼ったり、中国で違法な暗号資産(仮想通貨)での取引に切り替えたりしていると報じた。
中ロ貿易総額は昨年、過去最高を記録したが、今年3、4月の中国の対ロ輸出は前年同月から1割以上減少。中国は「月ごとの変動は普通のこと」(官製メディア)と主張するが、米国の対ロ制裁の影響も指摘されている。
経済低迷に悩む習政権は、米国を過度に刺激する行動は当面避けたい考えだ。米政権は14日、中国企業が補助金に頼り電気自動車(EV)などを過剰生産しているとして、対中関税の大幅な引き上げを発表。中国は対抗措置を示唆しつつも、スイスで同日行われた人工知能(AI)を巡る米中政策対話には参加するなど、反応は抑制気味だ。
習政権が連携を急ぐ欧州との関係にも中ロ協力が影を落とす。習氏は今月上旬、フランスなど欧州3カ国を歴訪。マクロン仏大統領は習氏に、ロシアに武器を提供しないようくぎを刺した。
中国の著名論客・胡錫進氏は13日、自身のSNSに「(ウクライナ危機は)中国の戦争ではない。中国政府は全力で中立を維持し、巻き込まれてはいけない」と投稿。中国がロシアとウクライナの一方だけに肩入れしないよう呼び掛けた。