ロシア、北極評議会への復帰要望=中国と将来像相いれず―米専門家・第1部「二つの北極」(4)・〔66°33′N=北極が教えるみらい〕 2024年09月13日 07時31分

マシュー・ブレグ 米シンクタンク「ウィルソンセンター」国際研究員(本人提供・時事)
マシュー・ブレグ 米シンクタンク「ウィルソンセンター」国際研究員(本人提供・時事)

 マシュー・ブレグ・米シンクタンク「ウィルソンセンター」国際研究員の話 ロシアと中国が描く北極の将来像はまったく相いれないものだ。ロシアにとって北極は国家安全保障に関わる地域だが、中国は領有権のない公共領域にしたい。ロシアは管理された経済発展、中国は完全に自由な経済活動を望んでいる。両国は短期的には良い関係にあるが、将来も同じ道を歩むとは思えない。

 中国が北極にアクセスするには、米国とロシアの間にある狭いベーリング海峡を通る必要がある。ロシアはベーリング海峡を閉鎖することで、簡単に中国を閉め出すことができる。ロシアは中国にとって、北極の「門番」なのだ。

 このため、中国は慎重にならざるを得ない。要求し過ぎれば、墓穴を掘ることになるからだ。ロシアも中国抜きでは北極の資源開発をできないが、中国が北極で重要な役割を担うことは困る。両国は非常に複雑な駆け引きをしている。

 ロシアの本音は、北極評議会に残りたいし、その活動に復帰したい。ロシアが脱退すれば、同評議会は北大西洋条約機構(NATO)の7カ国による枠組みになってしまう。また、同評議会がなくなれば、北極は統治の枠組みを失う。代わりの統治モデルを築こうとする主役は中国だろう。ロシアを含め、この地域の誰も中国の統治下に住みたいと思っていない。

 だから、ロシアは表立っては北極評議会への分担金支払いを拒否したり、脱退を示唆したりしているが、舞台裏では評議会への復帰を要望しているのだ。 

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