中国EV対策、米欧に温度差=追加関税、スタンスの違い浮き彫り 2024年10月05日 14時10分
【ワシントン時事】米欧カナダが、巨額の補助金を背景にした過剰生産などを理由に、中国製電気自動車(EV)への追加関税を決めた。ただ、米加が部品も含めて中国製EVを排除する強硬姿勢なのに対し、欧州連合(EU)は中国との協議も継続する構えで、スタンスの違いが浮き彫りになっている。
バイデン米政権は9月下旬、中国製EVに現行の4倍となる100%の制裁関税を発動。重要鉱物やEV用リチウム電池にも25%の関税を上乗せした。インターネットに接続する中国製「コネクテッドカー(つながる車)」の販売規制も打ち出し、「サプライチェーン(供給網)に『懸念国』がいないようにする」(米政府高官)姿勢を鮮明にした。カナダも同様の措置で追随した。
一方、EUは10月4日、中国製EVに最大35.3%の追加関税を課す案が加盟国から支持されたと発表した。ただ「代替案を模索するため、中国と努力し続ける」とも強調。米メディアによると、ドイツ、ハンガリーなど5カ国が追加関税に反対し、一枚岩ではない現状を露呈した。
背景には米欧の自動車市場の違いがある。米国ではEVも含めて中国車はほとんど走っておらず、「中国製部品の使用は抑制している」(日系自動車メーカー)のが実情。米財務省の元高官は、安価な中国製EVが流入すれば、米市場を中国に一方的に奪われてしまうため、「現状を守るための措置だ」と追加関税の意義を説明する。
一方、欧州では既に、中国製EVが一定の存在感を示している。中国と欧州の自動車メーカーは互いの域内に生産拠点を持ち、高関税の打撃は大きい。EUと中国は既に、中国製EVの最低販売価格を協議することで合意しており、「貿易戦争」の回避を目指す構えだ。
米シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所のジェイコブ・キルケガード氏は、中国メーカーは今後、欧州への直接投資を加速させ「EU域内での生産を増やしていく」と予想。EUは北米のような中国製品排除には向かわないとみている。