ロシアの違法拘束7000人=停戦交渉「解放が最優先」―ノーベル賞のウクライナ団体 2025年02月21日 14時12分

【キーウ時事】開始から3年となるウクライナ侵攻で、ロシアは占領地でウクライナ市民を違法に拘束した。ロシアの戦争犯罪の記録に取り組み、2022年にノーベル平和賞を受賞したウクライナの人権団体「市民自由センター(CCL)」によると、拘束された市民は少なくとも7000人で、拷問や人権侵害も常態化。CCLは今年1月、停戦交渉では市民の解放や連れ去られた子供たちの帰還に関する合意が最優先と訴えるキャンペーンを始めた。
◇日本の近くにも収容
「現在、ロシア全土の182施設でウクライナ市民が収容されている。日本の近くの極東・沿海地方にもいる」。こう話すのはCCL幹部のミハイル・サワ氏。CCLは解放された市民からの聞き取り調査のほか、ロシアがプロパガンダとしてSNSで流す情報を分析し、拘束された市民の特定や収容先の確認を進めている。
ロシア国内にも危険を冒して手助けしてくれる協力者がおり、約2000人の拘束者については氏名が判明。CCLはうち一部について、写真と共に拘束時の状況や収容先の情報をサイトに掲載しているが、収容先が「不明」の人も多い。サワ氏は「ロシアは占領地で拘束した市民を通常はすぐに刑務所に送らない」と述べ、「1カ月、場合によっては半年間、どこかの地下室に拘束し、拷問することがある」と説明した。
ロシア当局は「やってもいない犯罪を自白させ、服従させるために殴打し、拷問する」といい、主にウクライナとの国境に近いロシア南部ロストフナドヌーにある南部軍管区の裁判所で判決が言い渡される。拘束者は閉鎖空間で体を動かすこともままならず、健康を損なっていくという。
欧州安保協力機構(OSCE)は昨年4月、ロシアによる違法拘束の実態に関する報告書を発表した。その中で「拘束された市民は拷問や非人道的な扱い、性的暴力などにさらされている。超法規的殺人の事例も記録されている」と批判。「戦争犯罪と人道に対する罪の両方が行われたと信じるに足る合理的根拠がある」と結論付け、ロシアに対し、市民の即時解放を要求した。
◇「人間第一」
侵攻の長期化で、収容が続く市民の安否への懸念は強まる。停戦交渉の動きが出てきたことを踏まえ、CCLは1月下旬、同じく22年にノーベル平和賞を受賞したロシアの人権団体「メモリアル」と共に、市民の解放を第一とするキャンペーンの開始を発表した。
キャンペーンの名称はトランプ米大統領が掲げる「米国第一」を意識して「人間第一」とした。これに参加した国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチなど30近い団体は「侵攻の政治的解決は複雑で、交渉は何年もかかるかもしれないが、戦時下で拘束された人々が直面する人道問題は極めて急を要する」と強調し、まずは市民解放を優先するようトランプ政権や関係国に強く要請している。