子供たちの心むしばむ戦争=ユニセフ職員「支援の継続必要」―ウクライナ 2025年02月25日 15時26分

国連児童基金(ユニセフ)が設置した遊び場で子供と遊ぶ矢上大顕さん(左)=24年9月、ウクライナ・キーウ(ユニセフ提供)
国連児童基金(ユニセフ)が設置した遊び場で子供と遊ぶ矢上大顕さん(左)=24年9月、ウクライナ・キーウ(ユニセフ提供)

 ロシアによる侵攻から3年を迎えたウクライナで、戦地に暮らす子供たちの精神的ダメージが深刻化している。国連によると、侵攻開始以降に18歳未満の2520人以上が死傷し、5人に1人が近親者や友人を失った。戦争が長期化する中、国連児童基金(ユニセフ)ウクライナ事務所の矢上大顕さんは、子供たちへの「支援を続けていくことが必要だ」と訴える。
 2023年から支援事業の評価などに携わる矢上さんは、ウクライナの子供たちの「精神面、発達面、学習条件など、目に見えにくい部分への影響を懸念している」と語る。実際、戦時下で幼少期を過ごした子供は、心の病を患うリスクが高まるとされる。
 学校に通えないことも、子供たちのストレスに拍車を掛けている。ウクライナではこれまでに1600超の教育施設が損壊。約4割の子供がオンラインのみや、対面と遠隔を組み合わせた授業で学ぶ。級友らと交流する機会が失われ、10代の若者の3分の1が絶望感を抱えているとの報告もある。
 子供たちの精神面の負担を少しでも軽減するため、ユニセフは地下シェルターに教室を整備するハード支援のほか、家庭訪問や公共の場を遊び場として開放することなどソフト面のケアを強化。矢上さんはキーウ駅に設けた遊び場で、パニック発作を起こす幼い子供を連れた母親から「戦争をひとときでも忘れられる場所があって、ありがたい」と声を掛けられ、心動かされたという。
 しかし、ロシアからの攻撃は続き、国連によれば、24年に死傷した子供は前年比で57%増加。戦争が長期化すればするほど、子供たちの心の傷も深くなる。矢上さんは「子供がいなくなれば、国の将来もなくなる。危機的状況にいる子供たちを守らなければならない」と力を込めた。 

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