米金融界、多様性推進が後退=トランプ大統領の圧力恐れ 2025年03月01日 16時12分

 【ニューヨーク時事】米金融界で、少数派にも配慮する「多様性、公平性、包括性(DEI)」推進策を見直す動きが広がっている。ゴールドマン・サックスは株式上場を目指す企業への支援条件としていた多様性要件を撤廃。DEIを批判するトランプ大統領からの圧力を恐れ、取り組みが後退した形だ。
 ゴールドマンは新規株式公開(IPO)の引き受け業務を行う際、取締役会に1人以上の女性役員を入れることなどを企業に要請。米国や欧州では、取締役が男性のみといった企業のIPO業務を近年見送ってきた。しかし、米裁判所は2024年12月、上場企業に女性などの取締役任命を求めるナスダックのルールが無効との判決を下した。ゴールドマンの決断にはこの司法判断も影響したもようだ。
 シティグループも役職に占める女性や黒人らの比率を定めた目標の取り下げを決めた。JPモルガン・チェースは2月に公表した24年の年次報告書に多様性を推進するとの文言を盛り込まなかった。「DEIなど公共政策を巡り活動家や政治家らからの非難が続くと予想される」と説明した。
 米ブルームバーグ通信によると、JPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)は会合で、多様な人種と協調した企業運営は重要としつつも、「くだらないことに金を使っている」と切り捨てた。
 トランプ氏がDEI推進に終止符を打つ大統領令に署名し、社会の分断が深まる中、積極派のレッテルを貼られれば銀行口座の解約などにも発展しかねない。金融界の動きについて、市場からは「保守派からたたかれないためにもやむを得ない判断だ」(アナリスト)との声も出ている。 

海外経済ニュース