真鍋氏にノーベル物理学賞=地球温暖化予測に貢献―「気候モデル」確立 2021年10月05日
スウェーデン王立科学アカデミーは5日、2021年のノーベル物理学賞を、コンピューターを使った地球温暖化などの予測手法を確立した米プリンストン大の真鍋淑郎上席研究員(90)ら3氏に授与すると発表した。
真鍋氏は愛媛県出身。1958年に渡米し、米海洋大気局などで研究を続け、75年に米国籍を取得した。
授賞理由は「複雑な物理システムの理解に対する画期的な貢献」。他に受賞が決まったのは、独マックスプランク気象学研究所のクラウス・ハッセルマン名誉教授(89)と伊ローマサピエンツァ大のジョルジョ・パリージ教授(73)。
真鍋氏は1960年代から、大気と海洋の数値計算モデルを結合し、さまざまな要素が複雑に絡み合う気候変動の仕組みについて、コンピューター上でシミュレーションを可能にする「気候モデル」の手法を確立。大気中の二酸化炭素の濃度上昇が、温暖化につながることを実証した。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が90年に公表した第1次評価報告書には、真鍋氏の研究成果が引用されている。
ハッセルマン氏は、自然現象と人間の活動がそれぞれ気候に与える影響を識別する方法を開発。パリージ氏は、気候のような無秩序で複雑な現象に隠されたパターンを扱う「複雑系」と呼ばれる分野の理論に貢献した。
日本人のノーベル賞は2019年に吉野彰・旭化成名誉フェロー(73)が化学賞を受賞して以来で計28人目(米国籍取得者を含む)。物理学賞は15年の梶田隆章・東京大宇宙線研究所長(62)以来で6年ぶり、12人目となる。
例年、授賞式は12月10日にストックホルムで開かれるが、昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大の影響で方式を変更。受賞者は自国でメダルと賞状を受け取る。
賞金1000万スウェーデンクローナ(約1億2700万円)は、真鍋氏とハッセルマン氏が4分の1ずつ、残りがパリージ氏に贈られる。
◇真鍋淑郎氏の略歴
真鍋 淑郎氏(まなべ・しゅくろう)1931年9月21日、愛媛県の現四国中央市出身。58年東京大大学院で博士号取得、渡米して米海洋大気局上席研究官などを経て米プリンストン大上席研究員。
75年米国籍取得。92年旭硝子財団のブループラネット賞、2018年スウェーデンのクラフォード賞受賞。
◇受賞決定者の略歴
米プリンストン大の真鍋淑郎上席研究員と同時にノーベル物理学賞に選ばれた2氏の略歴は次の通り。
クラウス・ハッセルマン氏 1931年独ハンブルク生まれ。57年にゲッティンゲン大で博士号を取得し、マックスプランク気象学研究所教授。99年に名誉教授。
ジョルジョ・パリージ氏 1948年伊ローマ生まれ。70年にローマサピエンツァ大で博士号を取得し、同大教授。2021年にウルフ賞受賞。