【2021年6月17日~18日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2021年06月28日 09時00分

金融政策決定会合における主な意見(2021年6月28日)



1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。
  • わが国経済は、ワクチン接種の進展もあって、前向きな循環が働き始めている。
  • 海外経済は、総じてみれば回復しているが、ワクチン接種の進捗が遅れている新興国では足もと停滞の動きがみられるなど、国・地域ごとに回復ペースにばらつきがみられる。
  • わが国の経済活動の水準は、当面、対面型サービス部門を中心に低めで推移し、不確実性の大きい状況が続くが、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、回復していくとみられる。
  • わが国経済は、足もとワクチン接種が急速に進捗しつつあるもとで、短期的には、飲食・宿泊等の対面型サービス消費のペントアップ需要の拡大等により、相応の回復が期待される。
  • 感染が落ち着いた状況が続けば、サービス関連消費も徐々に回復ペースを取り戻していくとみられるほか、ワクチン接種の加速は先行きの経済にとって明るい話題である。
  • 不確実性、不均一性は残るものの、ワクチン接種の進展で世界経済の回復は一層明瞭になった。わが国でも同様の回復が起きることが期待される。
  • わが国経済は、当面、感染症の影響が続くもとで、回復ペースは緩やかなものにとどまるとみられる。その後は、ワクチン接種が進展し、感染症の影響が収束に向かえば、潜在成長率を上回る成長も期待できる。
  • 経済活動は、ワクチン接種の進展に伴い活発化すると考えられるが、感染症の帰趨と経済・物価の下振れリスクにも引き続き注意が必要である。
  • ワクチン普及に伴う世界経済の回復とそれに伴う需要拡大を背景に、幅広い品目の価格が上昇しているが、これが長期化すると、交易条件の悪化を通じて国内経済の下押し要因となり得る。
  • 増大した企業債務が成長に向けた取り組みの重石となっていないか、企業や金融機関の対応状況の丁寧なモニタリングが重要である。
  • 21年3月期の決算によれば、国内銀行は、感染症の影響により当初懸念されていた与信費用の急増に伴う大幅な収益悪化を回避できており、金融システムの安定性は維持されているものとみている。
  • この20年での欧米各国とのデジタル関連投資の蓄積の差は大きく、わが国企業がデジタル化を更に加速していくことが重要である。


(2)物価

  • 消費者物価の前年比は、目先、0%程度で推移した後、経済の改善が続くことや、エネルギー価格の上昇、携帯電話通信料引き下げの影響剥落などから、徐々に上昇率を高めていく。
  • ペントアップ需要が現れ始める本年後半から物価を巡る情勢が改善し、物価上昇率も高まっていく。
  • 国際商品市況の上昇や内需の改善が物価上昇に寄与するものの、その勢いは力強さに欠けるとみている。
  • 物価は、ワクチン接種の状況次第で上振れる可能性もあるが、根強いデフレマインドもあって、インフレ圧力は一時的なものにとどまるとみられる。
  • 経済の回復が消費者物価の持続的な上昇につながるには、財政の支えがある中で緩和的な金融環境が維持され、家計と企業の余剰資金が消費・投資に向かうことが重要である。


2.金融政策運営に関する意見

(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの延長

  • 企業等の資金繰りは、ひと頃より改善しているものの、今後もストレスのかかる状況が続くと予想されることを踏まえると、「特別プログラム」の期限を半年間延長し、引き続き、企業等の資金繰りを支援することが適当である。
  • 当面は、感染症の影響により対面型サービス消費が抑制され、資金繰りの懸念が生じるリスクが残るため、「特別プログラム」は、半年間延長することが望ましい。
  • 感染症の影響の収束が確実になるまでは、政策対応を着実に続けることが重要であり、「特別プログラム」は当面延長することが適当である。
  • 銀行貸出残高の動向などをみると、なお資金ニーズが旺盛なセクターが存在する。「特別プログラム」の延長など、配慮が必要な状況が続いている。
  • 「特別プログラム」の延長を今回決定すれば、金融機関に早めに方針を示すことができ、企業等にも安心感を与えられる。


(2)気候変動関連分野での金融機関の取り組みを支援するための新たな資金供給制度

  • 気候変動の影響は経済や金融システムに及ぶことから、中央銀行の使命にも関係する。金融政策面での対応については、ミクロの資源配分の側面についてどう考えるかなど検討すべき要素は多いが、日本銀行として、方向性を示す時期に来ている。
  • 長期的には、気候変動は自然災害の頻発等を通じて経済・物価・金融に甚大な影響を及ぼしうる。気候変動対応は、国民経済の健全な発展やマクロ経済の安定という中央銀行の使命と関連付けられるべきである。
  • 日本銀行として、気候変動に関連する分野での民間企業の様々な取り組みを金融面から支援することは、中央銀行としてのマンデートに沿ったものと考える。
  • 気候変動問題に金融政策で対応する際には、日本銀行の使命に則したものであること、市場中立性に配慮すること、が重要である。また、タクソノミーなど気候変動を巡る外部環境が流動的なもとでは、柔軟な対応が可能な仕組みとすべきである。
  • 金融機関自らが判断する多様な気候変動対応投融資に対して、日本銀行がこれらをバックファイナンスする仕組みであれば、ミクロの資源配分への直接的な関与を避けられる。また、新たな資金供給制度は、成長基盤強化支援資金供給制度の後継と位置付けることが考えられる。
  • 民間部門の気候変動への対応を支援する措置を、金融政策として市場中立性に配慮しつつ、検討することが適当である。ただし、民間部門の具体的な取り組みや経済・物価への影響について議論が尽くされていない点が多いため、政策を具体化する際には慎重に行う必要がある。
  • 今後、金融機関等と意見交換を行い、次回の会合で制度の骨子を公表したうえで、準備が整えば、年内に資金供給を開始することがひとつの目途になる。


(3)その他

  • 国際的に、経済回復に向けた政策支援の継続に関しては認識が共有されている。わが国でも引き続き粘り強く金融緩和を継続することが重要である。
  • 金融政策運営では、先行きの景気回復という追い風を捉えて緩和姿勢を強めることで目標達成につなげることが重要である。
  • 日本銀行の使命である2%の「物価安定の目標」実現に向けて、対外コミュニケーションを充実すべきである。
  • SNSなど国民に直接情報を伝えるツールが整ってきているもとでは、中央銀行による丁寧な情報発信の重要性が一層増している。
  • 感染症の影響により遅れることとなった経済構造の変革を進めていくことが重要である。日本銀行としても、ポストコロナ時代に向けた世界的な経済社会構造の変化も踏まえたうえで、わが国経済の健全な発展に資する政策対応について、さまざまな工夫を検討していく必要がある。


3.政府の意見

(1)財務省

  • 議論のあった事項は、企業金融の円滑確保等に万全を期する姿勢を示すものと受け止めており、気候変動に関する支援の検討とあわせ、適切にご検討頂きたい。
  • 骨太方針2021が、本日とりまとめられる。政府は、感染症対応やグリーン等の成長分野への民間需要喚起等に取り組む。また、歳出・歳入両面の改革にしっかりと取り組む。
  • 日本銀行には、政府との連携の下、感染症への対応をはじめ、必要な措置を適切に講じることを期待する。


(2)内閣府

  • 9都道府県での緊急事態宣言解除等を決定したが、引き続き、感染拡大の抑制を最優先とし、厳しい影響を受ける方には重点的・効果的に支援していく。
  • 骨太方針2021については、グリーン、デジタル、地方、子ども、の4つの課題に重点的な投資を行い、力強い成長を目指すこととしている。
  • 今回の提案については時宜を得たものと認識しており、日本銀行においては、引き続き、政府と緊密に連携し、適切な金融政策運営を期待する。

[ゴールデン・チャート社]


■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2021年6月17、18日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)

■関連リンク

主要各国の金融政策スケジュール