6月16日 パウエル議長オープニング・ステートメント=FOMC記者会見 2021年06月17日 15時50分
FOMC終了後記者会見、パウエル議長のオープニング・ステートメント
2021年6月16日
- 経済活動と雇用は引き続き改善されており、今年の実質GDPは過去数10年で最大の成長率を達成する見込み
- ここ数カ月のインフレ率の上昇は顕著で、4月のPCE(個人消費)物価の12カ月間の変化率は3.6%に上昇
- このインフレ率上昇は経済の再開に伴う消費支出の回復による価格上昇圧力と供給のボトルネックが原因
- 失業率は5.8%と高い水準にあり、雇用はパンデミック前の水準に戻っていない
- 長期的なインフレ目標の2%に固定され、最大雇用が達成されるまで緩和政策を維持していく
- SEP(経済見通し)では経済回復が以前の予測より早く達成されると予測、FF金利の予測の中央値は2023年では実効下限値を上回っている
パウエル議長のオープニング・ステートメント(全文)
[日本語訳 ゴールデンチャート社]
こんにちは。米連邦準備制度理事会(FRB)において、私たちは議会から与えられた金融政策の目標として最大雇用と物価安定の達成に重大な責務を託されています。
本日、連邦公開市場委員会(FOMC)は、金利をゼロ近傍に保持し、資産購入のペースを現状維持とすることとしました。金利およびバランスシートに関する強力なガイダンスに基づいたこれらの措置は、経済回復が完了するまで金融政策として強力な経済支援を続けることができます。
また、ワクチン接種の進展と前例のない財政政策も経済回復を強力に支援しています。経済活動と雇用に関する指標は引き続き改善されており、今年の実質GDPは過去数10年で最大の成長率を達成する見込みです。この急速な成長の多くは、落ち込んだレベルからの回復が続いていることを反映したものです。パンデミックの影響を最も受けたセクターは依然として弱いものの、改善が見られます。家計おける消費は、ビジネス再開の進展、財政支援、緩和的な金融環境に後押しされ、急速なペースで増加しています。住宅部門は堅調で、設備投資もしっかりしたペースで増加しています。一部の産業では、短期的な供給の制約が企業活動を抑制しています。FOMC参加者による今年の経済成長予測では、3月に発表した「経済見通しのサマリー」から上方修正されました。しかしながら、回復は不完全であり、経済の先行きに対するリスクはなお残っています。
全般的な経済活動とともに、労働市場の状況も改善を続けていますが、改善のペースにはばらつきがあります。4月と5月の雇用者数は月平均で41万9000人増加しました。このうち、レジャーおよび接客部門は引き続き顕著な増加を示しました。この部門および経済全体の雇用はパンデミック前の水準を大きく下回っています。5月の失業率は5.8%と引き続き高い水準にありますが、とりわけ労働市場への参加率が過去1年間ほとんどの期間で低い水準から上昇していないことを考えると、この数字は雇用の不足を控えめに表していることになります。介護の必要性、ウイルスに対する持続的な不安、失業保険の支払いなど、パンデミックに関連する要因が雇用の伸びを圧迫しているようです。これらの要因は、ワクチン接種数の増加を背景に、今後数カ月のうちに弱まり、雇用の増加はより急速に進むと思われます。FOMC参加者は、今後、労働市場は引き続き改善すると予測しており、失業率は今年末に4.5%、2023年末には3.5%まで低下するとの予測が中央値となっています。
経済の低迷はすべての米国人に均等に降りかかっているわけではなく、負担を負う能力の低い人々が最も大きな打撃を受けています。特に、サービス業に従事する低賃金労働者やアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系アメリカ人には、これまでの経済の回復にもかかわらず、雇用の機会が与えられていません。
インフレ率はここ数カ月で顕著に上昇しています。4月のPCE (個人消費)物価の12カ月間の変化率は3.6%で、今後数カ月間は上昇し続けた後、緩やかになると思われます。この上昇の一部は、パンデミック初期の非常に低い数値が計算から除外されたことや、過去の原油価格の上昇が消費者のエネルギー価格に転嫁されたことが反映されています。これらの影響に加えて、経済の再開に伴う消費支出の回復による価格上昇圧力も見られます。特に、供給のボトルネックにより、一部のセクターでは短期的に生産が間に合わないことが発生しています。こうしたボトルネックの影響は予想以上に大きく、FOMC参加者は特に今年のインフレ予測を上方修正しました。このような一過性の供給の影響が弱まると、インフレ率は私たちが設定する長期目標に向かって低下していくと予想され、インフレ率予測の中央値は今年の3.4%から来年には2.1%、2023年には2.2%に低下しています。経済再開のプロセスは、パンデミック発生時のシャットダウンと同様、前例のないものです。再開が進むにつれ、需要の変化は大きく急速なものとなり、供給のボトルネックや雇用問題などの制約により、供給の迅速な調整が制限され続ける可能性があり、インフレ率が予想以上に高くなり、持続する可能性があります。私たちの金融政策の新しい枠組みでは、物価の安定を達成するためにも、また、広範で包括的な最大雇用の目標を達成する能力を高めるためにも、しっかりとしたインフレ期待を持つことの重要性を強調しています。長期的なインフレ期待の指標は、パンデミックの初期に見られた低いレベルから概ね反転し、私たちが設定したの長期的なインフレ目標である2%とおおむね一致する範囲に入っています。インフレの進展や長期的なインフレ期待が、目標に合致する水準を大きく超えて継続的に変化する兆候が見られた場合には、金融政策のスタンスを変更する用意があります。
パンデミックは引き続き経済の見通しにリスクをもたらしています。ワクチン接種の進展により、COVID-19の感染拡大は抑えられており、今後も公衆衛生上の危機が経済に及ぼす影響は軽減されていくと思われます。しかし、予防接種のペースは鈍化しており、新種のウイルスは依然としてリスクとなっています。ワクチン接種の継続的な進展は、正常な経済回復の支えとなります。
FEDの施策は、米国民のために最大の雇用と安定した物価の実現という使命とともに、金融システムの安定化を促進するという責任に基づいて行われてきました。当委員会が本日、金融政策に関する声明で繰り返し述べたように、インフレ率が持続的に2%を下回っている中で、私たちは暫くの間2%を適度に上回るインフレ率の達成を目指し、やがてインフレ率は長期的に平均して2%となり、長期的なインフレ期待として2%にしっかりと定着されるようなると想定しています。このような雇用とインフレの成果が得られるまでは、金融政策として緩和的なスタンスを維持していくことにしています。金利に関しては、労働市場の状況が当委員会が評価する最大雇用に合致するレベルに達し、インフレ率が2%に上昇した後、暫くの間2%を適度に超えるような軌道に乗るまでは、フェデラルファンド金利の目標レンジを引き続き現在の0~1/4%に維持することが適切であると考えています。
SEP(経済見通し)で明らかなように、多くの参加者はこうした良好な経済状況が以前の予測よりもやや早く達成されると予測しており、フェデラルファンド金利の適切な水準に関する予測の中央値は、2023年では実効下限値(effective lower bound )を上回っています。もちろん、これらの予測は当委員会の決定や計画を示すものではなく、2、3年後の経済がどうなっているかは誰にもわかりません。しかし、どのような予測よりも重要なのは、金融緩和からの脱却時期がいつ来たとしても、金融政策は常に緩和的であり続けるということです。
金融緩和の脱却の条件が整うとうのは、概ね景気回復が堅調であり、もはやゼロ近傍の金利を維持する必要がないことを示すというものです。さらに、最大雇用と物価安定の目標に向けてさらに大きな進展があるまで、財務省証券の保有額を毎月800億ドル以上、政府系住宅ローン担保証券の保有額を毎月400億ドル以上増加させることを継続していきます。2020年3月以降のバランスシートの拡大は、金融環境を大幅に緩和し、経済を大きく支えています。
本日の会合では、昨年12月に資産購入のガイドラインを採択してからこれまで、目標に向けた進捗状況について議論してきました。「実質的な進展」という評価に達するのはまだ先のことになりますが、参加者は今後も進展が続くと期待しています。今後の会合では、当委員会は引き続き、目標に向けた経済の進捗状況を評価していきます。これまで述べてきたように、資産購入の変更を決定する際には、事前にお知らせします。
最後になりましたが、本日、連邦準備制度理事会(FRB)の管理レートをオペレーション上の調整をしました。IOER(超過準備預金金利)およびオーバーナイトRRP(リバースレポ)レートは、フェデラルファンドレートをターゲットレンジ内に十分に維持し、金融市場の円滑に機能をサポートするために、5ベーシスポイント上方修正されました。このオペレーション上の調整は、フェデラルファンドレートの適切な方向性や金融政策のスタンスに影響を与えるものではありません。
最後に、私たちは、私たちの行動が全米のコミュニティ、家庭、ビジネスに影響を与えることを理解しています。私たちの行動はすべて、公的な使命のために行われています。私たちFRBは、景気回復が達成されるまでの間、経済を支えるためにできるはすべてやるつもりです。皆様からのご質問をお待ちしております。
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