4月28日 パウエル議長オープニング・ステートメント=FOMC記者会見 2021年04月29日 15時23分
FOMC終了後記者会見、パウエル議長のオープニング・ステートメント 2021年4月28日
- 「最大雇用」と物価の安定が達せられるまで現状の緩和政策を維持する
- 年初来、経済活動と雇用は改善されているが、なおむらがあり完全でない
- 経済の先行きはコロナウィルスの行方に大きく左右される
- 雇用は増加しているが、失業率は6%と高い水準にある
- インフレ率は上昇中、今後もやや上昇した後、穏やかになるだろう
パウエル議長のオープニング・ステートメント(全文)
[日本語訳 ゴールデンチャート社]
こんにちは。米連邦準備制度理事会(FRB)において、私たちは議会から与えられた金融政策の目標として最大雇用と物価安定の達成に重大な責務を託されています。
今日、FOMCの同僚と私は、金利をゼロ付近に維持し、多額の資産購入を継続することとしました。これらの措置によって、金利およびバランスシートに関する強力なガイドラインに基づき、経済回復が達成されるまで強力な経済支援を提供し続けることが可能となります。
広範な予防接種と前例のない財政政策による措置も経済回復を強力に後押ししています。年初来、経済活動と雇用に関する指標は改善されてきています。家計でのモノへの消費支出は堅調に増加しています。住宅部門は景気後退から完全に回復し、設備投資や製造業の生産も増加しています。また、レストランやバーなどのサービス業への支出も増加しています。もっと一般的にいえば、パンデミックの影響を最も受けた経済部門は依然として弱いものの、改善が見られます。大方の予想よりも急速に回復していますが、まだむらがあり完全ではありません。
経済の先行きは、引き続きウイルスの感染状況とその拡大を抑制するための対策に大きく左右されます。3月以来、ワクチン接種の進展により、新規感染者数、入院者数、死亡者数は減少しました。新規感染者数の現状は依然として懸念され、特に、感染力の強いウイルスの感染拡大が新規感染者数に影響を与えていますが、ワクチン接種が継続されていくことで、今年後半には正常な経済状況を取り戻すことができると考えられます。それまでの間、公衆衛生と安全に関する指針を守っていけば、この目標の達成はさらに早まるでしょう。
経済活動全体と同様、労働市場の状況も改善を続けています。3月の雇用者数は91万6000人増加しました。これは、レジャーや接客部門が2カ月連続で顕著な増加を示したためです。しかし、この分野の雇用者数は、パンデミック発生時の水準を300万人以上下回っています。経済全体では、雇用者数はパンデミック前の水準より840万人減少しました。3月の失業率は6%と引き続き高い水準にありますが、特に労働市場への参加率がパンデミック前の水準を大幅に下回っていることから、この数字は雇用の不足を控えめに表していることになります。
景気の悪化はすべてのアメリカ人に均等に降りかかっているわけではなく、負担能力の低い人々が最も大きな打撃を受けています。特に、サービス業に従事する低賃金労働者やアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系アメリカ人の失業率の高さは深刻です。この経済的混乱は、多くの人々の生活を狂わせ、将来に大きな不安をもたらしています。
インフレ率の指標は上昇しており、今後もやや上昇してから緩やかになると思われます。短期的には、年率のPCEインフレ率は、パンデミック初期の非常に低い数値が計算から削除されることと、過去の原油価格の上昇が消費者のエネルギー価格に反映されることから、2%を超えると予想されます。これらの効果に加えて、経済の再開に伴う消費の回復による物価上昇圧力も考えられますが、特に、供給のボトルネックにより短期的に生産が迅速に対応できない場合には、物価上昇の圧力がかかる可能性があります。しかし、このような一時的な物価上昇は、インフレ率に一過性の影響しか与えないと思われます。
今回の危機に対するFRBの対応は、米国民のために最大の雇用と安定した物価の達成に向けて推進していく使命と、金融システムにおける安全性の確保という責任に基づいて行われてきました。「長期的な目標と金融政策ストラテジーに関する声明」で述べているように、私たちは最大雇用を広範かつ包括的な目標と考えています。今後数年間で最大雇用を達成できるかどうかは、長期的なインフレ期待が2%にしっかりと固定されているかどうかに大きく依存しています。
委員会が本日の金融政策声明で繰り返し述べたように、インフレ率が持続的に2%を下回っている現状では、暫くの間、2%を適度に上回るインフレ率を達成することを目指していきます。そして、その後、インフレ率が長期的に平均して2%となり、長期的なインフレ目標としての2%にしっかりと定着するようになると想定できます。このような雇用とインフレの成果が得られるまで、金融政策は緩和的なスタンスを維持していきます。金利に関しては、労働市場の状況が当委員会が評価する最大雇用に合致するレベルに達し、インフレ率が2%に上昇し、しばらくの間2%を適度に上回る軌道に乗るまでは、フェデラルファンドレートのターゲットレンジを現在の0~1/4%に維持することが適切であると考えています。今年起こりそうな2%を超える一時的なインフレ率の上昇は、この基準を満たさないことに留意したいと思っています。
そのうえで、最大雇用と物価安定の目標に向けて実質的な進展が見られるまで、財務省証券の保有額を毎月800億ドル以上、政府系住宅ローン担保証券の保有額を毎月400億ドル以上増やし続けます。昨年3月以降のバランスシートの拡大は、金融環境を大幅に緩和し、経済を大きく下支えしています。しかし、現状は雇用と物価安定の目標からはかなり離れており、実質的な前進を達成するにはなお時間がかかるでしょう。
金利と資産購入に関するガイドラインは、フェデラルファンドレートの推移とバランスシートの規模を雇用とインフレの目標達成に向けた道筋に結びつけたものです。こうした結果を基にしたガイドラインであることから、経済回復が進んでも金融政策のスタンスが非常に緩和的であることが担保されます。
最後に、私たちは、私たちの行動が米国の地域社会、家庭、企業に影響を与えることを理解しています。私たちの行動はすべて、公的な使命のために行われています。われわれFRBは景気回復が完了するまでの間、経済を支えるためにできる限りのことをしていきます。
ありがとうございました。皆様からのご質問をお待ちしております。
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