9月22日 パウエル議長オープニング・ステートメント=FOMC記者会見 2021年09月24日 15時59分
FOMC終了後記者会見、パウエル議長のオープニング・ステートメント
2021年9月22日
- FOMCは金利をゼロ近傍に維持するために資産購入のペースを現状維持ことを決定した。
- デルタ株によりCOVID-19の感染者が大幅に増加し、経済の回復が遅れている。これはウイルスや供給不足が原因で、経済成長予測は6月発表した予測からやや下方修正された。
- 8月の雇用は大幅に減速し、レジャーや接客部門を含めたパンデミックの影響を最も受けやすい部門に集中した。8月の失業率は5.2%だった。
- インフレ率は上昇しており今後数カ月間はこの状態が続くと思われる。供給のボトルネックの影響は予想以上に大きく長続きしているため、FOMC参加者の今年のインフレ予想は上方修正された。
- 予想通りの経済の進展が見られれば、資産購入のペースを早急に調整する必要がある。
- 本日、資産購入の適切なテーパリングのペースについても議論した。FOMC参加者は緩やかながテーパリングが適切と考えている。テーパリングの終了は来年半ばを想定している。
- テーパリングの終了後も高い長期国債の保有率を維持、緩和的な金融環境が続くだろう。
- FOMC参加者の半数は、フェデラル・ファンド金利の適切な水準に関する予測の中央値は2022年に実効下限をわずかに上回る水準となっている。
パウエル議長のオープニング・ステートメント(全文)
[日本語訳 ゴールデンチャート社]
こんにちは。米連邦準備制度理事会(FRB)は、議会から与えられた金融政策目標である最大雇用と物価安定の実現を最大の使命としています。
本日、連邦公開市場委員会(FOMC)は、金利をゼロ近傍に維持するために、資産購入のペースを現状維持することとしました。この措置に加え、金利やバランスシートに関する強力なガイダンスにより、経済回復が達成されるまでこうした金融政策による経済支援が継続されます。
ワクチン接種の進展や前例のない財政政策の実施も、回復を強力に後押ししています。経済活動と雇用を示す指標は引き続き強化されています。上半期の実質GDPは6.4%増と力強いペースの成長率となり、下半期も力強いペースで成長が続くと広く予想されています。パンデミックの影響を最も受けた部門はここ数カ月で改善しましたが、その後、COVID-19 感染者の増加により回復が遅れています。家計支出は上半期に極めて急速なペースで増加しましたが、7月と8月には旅行やレストランなどCOVID の影響を受けやすい分野で支出が鈍化し、横ばいとなりました。また、一部の産業では、短期的な供給不足が生産活動を抑制しています。特に自動車産業では、 世界的な半導体の供給不足により生産が大幅に減少しています。ウイルスや供給不足の影響もあり、FOMC参加者による今年の経済成長予測は、6月に発表した「経済予測のまとめ」からやや下方修正されましたが、FOMC参加者は依然として急速な成長を見込んでいます。
経済活動全体と同様に、労働市場の状況も改善を続けています。労働力に対する需要は非常に高く、過去3カ月間の雇用増加数は月平均75万人でした。しかし、8月には雇用の増加が大幅に減速し、その減速はレジャーや接客部門を含めたパンデミックの影響を最も受けやすい部門に集中しました。8月の失業率は5.2%でしたが、特に労働市場への参加率が過去1年間のほとんどの期間に渡って低かったことから、この数字は雇用の不足を過小評価しています。介護の必要性やウイルスへの継続的な不安など、パンデミックに関連する要因が雇用の増加を妨げているようです。
これらの要因は、ウイルスの封じ込めが進めば解消し、雇用の増加がより急速に進むと思われます。今後についてFOMC参加者は、労働市場が引き続き改善すると予測しており、失業率の中央値は今年末に4.8%、2023年と2024年には3.5%になると予想しています。
景気の悪化は、すべてのアメリカ人に平等に降りかかっているわけではなく、負担能力の低い人々が最も大きな打撃を受けています。景気が改善しているにもかかわらず、失業率は特に、サービス業の低賃金労働者やアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系アメリカ人に偏っています。
インフレ率は上昇しており今後数カ月間はこの状態が続くと思われますが、その後は緩やかになるでしょう。経済の再開が続き、消費が回復するにつれ物価上昇圧力が生じています。一部の分野では、短期的には特に供給のボトルネックが早急に生産が追い付かない状況の原因となっています。このようなボトルネックの影響は予想以上に大きく長続きしているため、FOMC参加者は今年のインフレ予想を上方修正しました。このような供給面での影響は今のところ顕著ですが、今後は緩和されインフレ率は長期的な目標に向かって低下していくと予想されます。FOMC参加者によるインフレ率予測の中央値は、今年の4.2%から来年には2.2%に低下しています。
経済再開のプロセスは、パンデミック発生時のシャットダウンと同様、前例のないものです。再開が進むにつれ、供給のボトルネックや雇用の困難さなどの制約が予想以上に大きくなり、長く続く可能性があり、インフレ率の上昇リスクとなります。金融政策の枠組みでは、物価の安定を促進するためにも、また、広範かつ包括的な最大雇用の目標を達成する能力を高めるためにも、十分に安定したインフレ目標の達成が重要であることを強調しています。長期的なインフレ期待を示す指標は、私たちの長期的なインフレ目標である2%とおおむね一致しています。
持続的なインフレ上昇が深刻な懸念材料となった場合、私たちは確実に対策を講じ、インフレ率が私たちの目標に合致するレベルで推移するような手段を用いることになるでしょう。
経済が歩む道筋は引き続きウイルスの動向に依存しており、経済の見通しに対するリスクは残っています。デルタ株によりCOVID-19の感染者が大幅に増加し、大きな苦難と損失をもたらし、経済の回復が遅れています。ワクチン接種の継続的な進展は、ウイルスの封じ込めに役立ち、より正常な経済状況への復帰を支援するとになるでしょう。
FRBの政策は、米国民のために最大の雇用と物価の安定を促進する使命と、金融システムの安定を促進する責任に基づいて行われてきました。FRBの資産購入は重要な手段であった。パンデミックの初期には金融の安定と市場機能の維持に貢献し、それ以降は緩和的な金融環境を醸成することで経済を支えてきました。
本日終了した会合では、昨年12月に「資産購入ガイダンス」を採択した目標に向けた進捗状況について引き続き議論しました。昨年12月以来、経済は目標に向けて前進しています。予想通りの進展が見られれば、当委員会は資産購入のペースを早急に調整する必要があると判断しています。また、経済状況が当委員会のガイダンスで示された基準を満たした場合、資産購入の適切なテーパリングのペースについても議論しました。
今回決定はされませんでしたが、FOMC参加者は概ね、景気回復が軌道に乗っている限り、テーパリングの終了は来年半ば頃と想定され、緩やかながテーパリングが適切であると考えています。バランスシートの拡大が止まった後も、高い長期国債の保有率を維持することで緩和的な金融環境が続くことになるでしょう。
今後の資産買入の縮小のタイミングとペースは、利上げのタイミングに直接的なシグナルを与えることを意図したものではありませんが、利上げについては明らかに別のより厳しい検証が必要です。私たちは引き続き、労働市場の状況が当委員会が評価する「最大雇用」に合致するレベルに達し、インフレ率が2%に上昇した後、しばらくの間2%を適度に超える軌道に乗るまで、フェデラル・ファンド金利の目標レンジを現在の0~1/4%に維持することが適切であると想定しています。FOMC参加者の半数は、こうした良好な経済状況が来年末までに満たされると予想しています。その結果、フェデラル・ファンド金利の適切な水準に関する予測の中央値は、2022年に実効下限をわずかに上回る水準となっています。参加者は一般論として、金融政策の引き締めが緩やかなペースで行われ、2024年までフェデラル・ファンド金利の水準が長期的な水準の予測を下回ると想定しています。もちろん、これらの予測は委員会の決定や計画を示すものではなく、誰も1年以上先の経済状況を確実に知ることはできません。どんな予測よりも重要なのは、最大雇用と物価安定の目標を達成するまで、金融政策が緩和的であり続けるということです。
最後になりましたが、私たちは、私たちの行動が日本中の地域社会、家族、企業に影響を与えることを理解しています。私たちの行動はすべて、公的な使命のために行われています。私たちFRBは、景気回復が完了するまでの間、経済を支えるためにできる限りのことをしていくつもりです。
ありがとうございました。皆様からのご質問をお待ちしております。
■関連記事
前回(6月15日~16日)パウエル議長オープニング・ステートメント
■関連情報(外部サイト)