米、息吹き返す労働運動=大統領選で声強まる?―日本企業も影響 2024年04月29日 14時29分
【ニューヨーク時事】米国で労働運動が息を吹き返している。インフレや格差拡大への不満を背景に、大規模ストライキの数は昨年、約20年ぶりの多さとなった。自身を「史上最も労組寄り」と評するバイデン大統領が積極的に応援する一方、トランプ前大統領も秋波を送っており、11月の大統領選に向けて労働者の声が一層強まる可能性もある。日本企業にも影響が及びそうだ。
「ついに山を動かした!」。全米自動車労組(UAW)のフェイン会長は4月中旬、投票で労組結成を決めたドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の米工場従業員を前に叫んだ。工場は、伝統的に組合に不寛容とされる南部にある。日本勢を含む外資メーカーは長年、南部を中心に工場を整備し、UAWの影響力を回避してきた。
UAWはフェイン会長が就任した昨年以降、強硬姿勢を強めており、米ゼネラル・モーターズなど大手3社「ビッグスリー」に対する史上初の一斉ストを行い、4年半で25%の賃上げを実現した。この成果を基に外資メーカー従業員も組織に加えようとキャンペーンを展開中で、まずVWを押さえた形だ。
大統領選で労組の支援を頼りにするバイデン氏は昨秋、UAWがトヨタ自動車などでも組合結成を目指していることを支持するかどうかを報道陣に問われ、「もちろん」と笑顔で回答。今回のVW従業員の投票結果に対しても、すかさずX(旧ツイッター)に「おめでとう」と投稿した。
トランプ氏も労働者票を獲得しようと躍起だ。自動車産業の中心地であるミシガンなど接戦州を制するには、ブルーカラーの支持がカギ。UAWは大統領選でバイデン氏の支持を決定したが、トランプ氏は個人レベルの票を掘り起こそうと自動車関連の工場などを訪問、トラック運転手の組合にも接近している。
日本企業も米労組の復活に無関係ではいられない。一層の賃上げ圧力にさらされるほか、大規模ストに見舞われる可能性もある。日系自動車メーカー関係者は「労組結成を経営側として止めることはできない」と説明した上で、「バイデン氏が当選すれば、労働運動はさらに盛り上がるだろう」と警戒を強めている。