米銀行規制の展望は=大統領選の結果が左右も―識者に聞く(上) 2024年05月01日 15時25分

インタビューに応じる大和総研の鈴木利光氏=4月9日、米ニューヨーク
インタビューに応じる大和総研の鈴木利光氏=4月9日、米ニューヨーク

 【ニューヨーク時事】米金融当局は、大手銀行と中堅行を対象に2023年にまとめた規制案を見直す方針だ。同年に相次いだ地銀の経営破綻を踏まえ自己資本を手厚くするよう求めたが、米経済に悪影響を与えるとして金融界が猛反発。11月の米大統領選の結果が議論の行方を左右する可能性もある。大和総研の鈴木利光主任研究員と、格付け大手S&Pグローバル・レーティングのマネージング・ディレクター、スチュワート・プレッサー氏に見直しの論点や展望を聞いた。
 ◇銀行監督の強化を
大和総研の鈴木利光氏
 ―米金融界が現行の規制案に反対した理由は。
 昨年経営破綻した地銀の資産規模を考慮し、国際的に活動する最大手行向けの「バーゼル規制」の対象を資産1000億ドル(約16兆円)以上の地銀に広げた。ただ、金融界には大問題。金融危機に備え自己資本を積み増すルールを順守するが故に、貸し渋りなどが起き、経済を停滞させるリスクがある。
 ―当局は提示した規制案を見直す意向だ。
 現行規制では、ローン債権などの含み損を考慮した上で、資産7000億ドル以上の銀行に自己資本を手厚く持つよう求めている。バイデン政権が今後、資産1000億ドル以上の地銀に適用する要件を一度白紙に戻すかどうかが焦点だ。一方、金利上昇に伴う国債の含み損が破綻のきっかけになったにもかかわらず、当局が金利リスクへの対応策を示していないことに違和感を覚える。
 ―トランプ前大統領が返り咲いた場合、規制はどうなる。
 トランプ前政権は資本規制について、資産2500億ドル以上7000億ドル未満の銀行に対する規制を緩和した。同氏が復帰した場合、大手行には現行規制を適用しつつ、地銀については個別の融資状況などに応じて監督強化を図る方向で議論が進むだろう。
 ―銀行監督の問題点は。
 地銀破綻で監督の脆弱(ぜいじゃく)性が浮かび上がった。保有資産の内訳を確認すればリスクがすぐに分かるのに、指導せずに問題を放置していたのではないだろうか。当局が銀行とやりとりを密にするなど個別の監督の仕方を見直した方がいい。 

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