革新政党台頭、対立構図に変化=タクシン派は既得権側に―タイ・14年クーデターから10年 2024年05月02日 06時12分
【バンコク時事】タイで2014年にクーデターが起きてから5月で10年となる。地方貧困層を支持基盤とするタクシン元首相派と、都市中間層を中心とする反タクシン派の争いが激化して起きたクーデターだったが、タイ政治を巡る状況はこの10年間で変化し、抜本的な改革を求めて台頭した革新政党と、タクシン派も含めた既得権益層が対立する構図となった。
14年5月22日、当時のプラユット陸軍司令官がクーデターを主導し、タクシン氏の妹インラック氏が直前まで首相だった政権が倒された。プラユット氏は民政復帰後も含め9年間首相を務めた。
タクシン派政権を倒すクーデターは06年にも起きている。地方の農村部など貧困層に重点を置く政策で人気を得ていたタクシン派に対し、王室や軍など既得権益層を支持する保守派は反発。反政府デモが続いて社会が混乱し、軍がクーデターを決行した。
こうした経緯もあり、昨年5月の総選挙でタクシン派のタイ貢献党は反軍を訴え、勝利を目指した。しかし、最多議席を獲得したのは18年に結党された新未来党(20年に解党処分)の後継の前進党で、タクシン派は01年以降の選挙で初めて第1党を逃した。
革新系の前進党について、タイ政治の専門家は「軍だけでなく王室の改革、大企業の独占排除などより根本的な変化を求める政策を打ち出し、若者を中心に支持を集めた」と分析する。ただ、党首だったピター氏は保守派の反対で首相に選出されず、王室に対する不敬罪の改正を公約に掲げたことで憲法裁判所による解党の危機に再び直面している。
一方、貢献党は親軍政党と手を組み連立政権を樹立。海外逃亡をしていたタクシン氏も昨年8月に帰国し、禁錮8年の判決を受けたが国王からの恩赦を得るなどして今年2月に仮釈放された。
外交筋は「多くの国民は、タクシン派は既得権益層側に『寝返った』とみている。今後、前進党が解党されても革新系の勢いは増すだろう」と指摘した。