背景に保守勢力の危機感=強まる改革要求―タイ 2024年08月07日 18時36分
【バンコク時事】タイの最大野党・前進党に対する憲法裁判所の解党命令の背景には、既得権益の喪失を恐れた王室や軍といった保守勢力の危機感がある。ただ、司法の名を借りた弾圧という見方が国民の間に広がり、保守勢力を批判して改革を求める声が一段と高まる可能性もある。
前進党の前身の新未来党は、2014年のクーデター後の軍事政権を批判し、19年の総選挙で第3党となった。20年に憲法裁による解党命令を受けると、若者を中心とした大規模な反政府デモが発生。批判の矛先は王室にも向けられ、政府は不敬罪の積極的な適用で沈静化を図った。
前進党は昨年の総選挙で不敬罪改正を含む軍や王室の改革、軍・王室を資金面で支える大企業による市場の独占排除といった政策を掲げ、新未来党の倍近い151議席を得た。外交筋は「有権者は投票によって社会が変わることを期待している。3年以内にも実施される次の総選挙では、前進党の後継政党がさらに議席を伸ばす可能性がある」と指摘する。
今月2日に記者会見した前進党のピター前党首は「政治とは長期的な闘いで、われわれは必要な忍耐と戦略を持っている。最終的には(保守勢力が)拒絶できないほど勝利するだろう」と強調した。