経済中心に対日協力模索か=学者より元外交官重用―韓国 2025年06月04日 00時09分

李在明氏=5月29日、ソウル(AFP時事)
李在明氏=5月29日、ソウル(AFP時事)

 【ソウル時事】韓国大統領選で勝利した革新系最大野党「共に民主党」の李在明氏は、「実用外交」を掲げ、日本を重視する姿勢をアピールしている。トランプ米政権の高関税政策が世界経済を揺さぶる中、低迷する景気の回復を最優先課題とする李氏にとって日本との協力は不可欠。今年は日韓国交正常化60周年で、反日的姿勢を自制し、安定的な対日関係を模索する見通しだ。
 李氏は、大統領選を前に日本への友好的な姿勢を強調。5月20日には「日本と仲良くしたい」と表明した。公約では未来志向の協力とともに、日米韓協力の維持・発展のため日韓間の協議を緊密化するとも盛り込み、尹錫悦政権の外交基調を維持する考えを示した。
 地方自治体の首長を務めた経験から「学者よりも役人を重宝する」(専門家)とされる李氏の周辺には元外交官など実務に通じたブレーンが多数集まった。外交政策にも「理念より現実」という李氏のモットーが反映されている。革新系の文在寅元大統領はかつての民主化運動勢力を基盤とし、民族主義的な理念や歴史観を重視したが、革新陣営で非主流だった李氏は性格を異にする。
 2024年に人的往来が過去最多となるなど改善した日韓関係に世論も好意的だ。韓国の経済団体は5月8日、大統領選を前に李氏に、日本が主導した「包括的および先進的な環太平洋連携協定」(CPTPP)への加入推進を要請。李氏も日本との経済協力に前向きな姿勢を示した。
 ただ、歴史問題といった懸案と経済などの協力を分けて対応する「ツートラック(2路線)」の原則は文政権と重なる。日本とゆかりが深く思い入れがあった尹前大統領と異なり、李氏は数回日本を旅行した程度とされる。
 李氏の公約には国内政策として15年の日韓慰安婦合意に基づき設置された財団の清算手続き推進など、実行されれば対立を再び招きかねない内容も入った。「ポピュリスト」と評される李氏はかつて反日的発言を繰り返し、尹政権の対日姿勢を「屈辱外交」と非難した経緯もあり、専門家は「外交哲学が見えない。行動を見極める必要がある」と指摘した。 

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