豪、対中経済実利を重視=「対トランプ」なお難渋 2025年07月15日 16時22分

【シドニー時事】中国を訪れているオーストラリアのアルバニージー首相は15日の習近平国家主席との会談で、貿易拡大を呼び掛けた。トランプ米政権の一連の高関税措置で世界経済の不透明感が増す中、豪州は最大の輸出先である中国との関係安定化で得られる経済的実利を重視した。一方、米国との間では、関税や原子力潜水艦配備計画の見直しなどへの対処に難渋している。
豪州は対中貿易黒字を計上しており、2024年の輸出額は約2000億豪ドル(約19兆円)。中国は20年以降、モリソン前豪政権が新型コロナウイルス起源調査を求めたことへの報復として豪産のワイン、牛肉、木材などの輸入を制限。対中交渉で24年にこれら貿易制裁の解除に成功したアルバニージー政権としては、後戻りを避け、経済関係を一層強化したい考えだ。
だが、中国艦艇が今年2月に豪東部沖で実弾射撃訓練を行ったこともあり、安全保障面では豪州は中国への警戒感を緩めていない。アルバニージー氏訪中の間も、豪州で日米など19カ国が参加する軍事演習を続けている。
一方、「米国第一」を唱えるトランプ政権からの圧力に豪州は苦慮。対米貿易が赤字であるのに相互関税などを課せられ、国防費の対国内総生産(GDP)比3.5%への増額を迫られている。米英豪の安保枠組み「AUKUS(オーカス)」に基づく豪軍への原潜配備計画を巡り、トランプ政権は米軍優先の立場で見直しを進めており、計画履行は遅れる可能性がある。
また、トランプ政権は豪州に対し、台湾有事での役割を明確にするよう求めたと英紙などが報道。豪側は「紛争参加をあらかじめ決めることはない」(コンロイ国防産業相)と困惑気味だ。対面での米豪首脳会談実現のめどは依然立っておらず、厳しい交渉を強いられそうだ。