ウイスキー不買に米業界悲鳴=トランプ関税にカナダ報復で 2025年08月23日 15時49分

【ニューヨーク時事】「トランプ関税」への報復措置としてカナダの州政府が主導する米国産ウイスキーなどの不買運動が、米酒類業界に大打撃を与えている。店頭から全面撤去されたことで米国産酒類の販売が激減。バーボンウイスキーの関連会社が経営破綻に追い込まれるなど、関係者から悲鳴が上がっている。
カナダを「51番目の州」と皮肉るトランプ米大統領は、米国への合成麻薬「フェンタニル」の流入対策不備を理由に、高関税でカナダを揺さぶる。両国関係は急速に悪化し、最大都市トロントを擁する東部オンタリオ州などは州の専売公社に米国産酒類を扱わないよう指示した。
カナダ業界団体の調べでは、3~4月の米国産ウイスキーなどの販売額は前年同期比66%減と大きく落ち込んだ。米国蒸留酒協議会のスウォンガー最高経営責任者は「撤去は米国の業界に損害を与えるだけでなく、不必要にカナダ州政府の収入を減らし、消費者を傷つけている」と窮状を訴え、不買運動の即時中止を求めた。
今年1~6月のカナダへの蒸留酒輸出額が同62%減ったとの試算も報じられており、状況は悪化の一途だ。7月には米南部ケンタッキー州のバーボンメーカーの親会社が連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)を申請。若年層のアルコール離れに加え、カナダの不買運動など先行き不透明感が追い打ちをかけたもようだ。
「脱米国」の動きは酒類にとどまらない。カナダ当局によると、7月に米国を自動車で訪れた市民は前年同月比37%減。反米感情の高まりは、かき入れ時の夏の観光シーズンに影を落とす。
カナダ政府は22日、米国からの輸入品に課す報復関税の多くを撤廃すると発表した。ただ、通商摩擦で冷え込んだ両国関係の修復は容易ではなく、試練は当面続きそうだ。