対立の行方、不透明に=「未知の領域」突入―米大統領とFRB 2025年08月26日 18時19分

【ワシントン時事】トランプ米大統領が、クック連邦準備制度理事会(FRB)理事を即時解任する意向を表明したことで、FRBとの対立は「未知の領域」に突入する。大統領が理事を一方的に解任するのは前代未聞で、金融市場の不透明感をいたずらに高めかねない。利下げ要求に応じないFRBに、意のままになる人物を送り込みたいトランプ氏の焦りも透ける。
中央銀行の独立性はインフレ抑制のカギとされる。トランプ氏がクック氏を解任するとSNSに投稿した直後から、金融市場ではFRBの独立性と中長期的な物価安定が損なわれるとの懸念が強まり、米国債10年物利回りが上昇。為替も一時、急激な円高・ドル安に振れた。
FRBの設置法である連邦準備法では、「正当な理由」がない限り、理事の解任はできないとされる。歴代大統領がこの条項を使って理事解任を実際に目指したことはなく、徹底抗戦の構えを示すクック氏が訴訟に踏み切れば「全く新たな展開となる」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル)。
FRBの理事会は議長、副議長を含めて7人で構成される。クック氏の首をすげ替えれば、トランプ氏の意向に従う理事が増えるのは事実だが、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)は理事会メンバーに加え、全米12地区の連邦準備銀行総裁から5人が投票権を持つ。このため、FRBの政策決定はトランプ氏の思い通りにならない公算が大きいとの見方もある。