米与党、対中関税引き上げ要請=大統領選にらみ、保護主義強まる 2024年05月07日 14時41分
【ワシントン時事】トランプ前米政権が2018年以降、知的財産権の侵害などを名目に発動した対中制裁関税の見直し作業が大詰めを迎えている。米与党民主党の有力議員らは6日までに、「中国による不正行為や安全保障を損なう動きが続いている」と主張。鉄鋼や電気自動車(EV)などへの関税を維持または引き上げるよう強く要請した。半年後に迫った大統領選をにらみ、米政権と議会は保護主義的な姿勢を強めている。
米通商代表部(USTR)のタイ代表は先月、「早急に結論を出す」との方針を示しており、今月中にも発表するとみられている。
前政権は18年以降、米通商法301条に基づき、4回に分けて中国からの幅広い輸入品に対する制裁関税を発動。計約3700億ドル(約57兆円)相当分に最大25%の関税を上乗せした。USTRは22年から、産業界からの要望を踏まえた見直し作業を続けている。
民主党上院トップのシューマー院内総務ら7人は1日付の書簡で、鉄鋼や太陽光発電設備、EVなどの分野で、「中国は不正な補助金や過剰生産能力によって作為的な低価格で輸出し、市場をゆがめる戦略を取っている」と非難。対中制裁関税の継続や引き上げを訴えた。
バイデン大統領は先月、中国産の鉄鋼とアルミニウムに対する制裁関税を3倍に引き上げることを検討すると表明。中国による高関税回避を防ぐため、輸出する際の経由地とみられているメキシコと協力を強化する方針も示している。
製造業が盛んな東部ペンシルベニア州や中西部ミシガン州などは、大統領選の結果を左右する。劣勢も伝わるバイデン氏は、産業保護を強調し、なりふり構わぬ姿勢で、労働者票の取り込みを図っている。
米国に拠点を置く日本企業では「中国製のEVやバッテリーなどの輸入は少ないので、関税率が引き上げられても影響は大きくない」(幹部)との声が多い。ただ、日本政府関係者は「メキシコ経由で入ってくる部品などに高関税が課されれば、問題になる恐れがある」と警戒している。