頼総統のライバル、相次ぎ逮捕=「政治とカネ」で政界大揺れ―政権基盤は強化・台湾 2024年09月16日 15時03分

台湾の陸海空軍士官学校の新入生合同入学式で訓示する頼清徳総統=13日、高雄(総統府提供・時事)
台湾の陸海空軍士官学校の新入生合同入学式で訓示する頼清徳総統=13日、高雄(総統府提供・時事)

 【台北時事】台湾で与野党の大物2人が、相次ぎ「政治とカネ」に絡んで逮捕された。与党・民進党の有力者で対中窓口機関トップの鄭文燦・前桃園市長(57)と、前台北市長で第2野党・民衆党の柯文哲主席(党首、65)。いずれも総統候補に名前が挙がり、頼清徳総統(64)のライバルと目されていただけに、逮捕は結果的に頼氏の政権基盤強化につながっている。
 ◇「独立派」と「知中派」
 「鄭氏逮捕」の一報が政財界を駆け巡ったのは7月6日。検察は8月27日、桃園市長だった2017年に土地開発に絡んで業者から現金500万台湾ドル(約2200万円)を受け取った収賄罪で、鄭氏を起訴した。行政副院長(副首相)などを歴任した鄭氏は蔡英文前総統に近く、逮捕は蔡氏が退任後も一定の影響力を維持するという大方の予想を覆した。
 政治信念の強さから「堅物」ともやゆされる頼氏とは対照的に、鄭氏は「柔軟」「人の気持ちが分かる」と評され、人脈も広い。対中国では、頼氏がかつて「台湾独立派」を公言していたのに対し、鄭氏は民進党で数少ない「知中派」だ。
 ある政界関係者は今夏、鄭氏から「次の総統選に出馬したい」と協力を要請されたと語る。総統は2期8年務めることができ、頼氏は現在1期目。次期総統選への出馬準備は、水面下で再選阻止に動いていたことを示すものだ。逮捕と起訴は「身内」の不正にも厳しい頼政権という好印象を世論に与えている。
 ◇第3勢力トップも
 鄭氏の逮捕に続き8月上旬、台湾メディアは柯氏を巡る「政治とカネ」疑惑を次々と報じ始めた。政治献金の虚偽申告や選挙補助金の不適切処理、台北市長時代の汚職疑惑だ。豪邸購入計画が取り沙汰された妻を含め、関係者は連日メディアに追われた。
 柯氏は8月29日、記者会見で「党の信頼を傷つけた」と謝罪。検察は、市長時代の汚職容疑で事情聴取し31日未明に逮捕した。民衆党は政治献金について「ミス」を認めながらも、柯氏の潔白を主張し「政党と検察が一体となった新権威主義体制だ」と頼政権を非難している。
 外科医出身の柯氏が創設した民衆党は、民進党と国民党という既存の二大政党に不満を持つ若年層を中心に支持を集めてきた。無罪となれば「権力不信」が爆発する可能性がある一方、相次ぐ醜聞に柯氏への失望も大きい。「カネに汚い印象は拭えない。裏切られた気持ちだ」(40代塾講師)と視線は厳しく、党勢は戻らないとの見方が広がっている。
 民間団体「台湾民意基金会」が今月16日に発表した世論調査によると、民衆党の支持率は12.0%と8月から1.8ポイント低下した。1月は22.5%だった。 

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行政副院長(当時)として来日し政界要人らと会談した鄭文燦・前桃園市長=2023年6月、東京・永田町の自民党本部
行政副院長(当時)として来日し政界要人らと会談した鄭文燦・前桃園市長=2023年6月、東京・永田町の自民党本部
地裁周辺に集まった支持者らを前に検察を批判する民衆党の柯文哲主席(党首)=2日未明、台北市(EPA時事)
地裁周辺に集まった支持者らを前に検察を批判する民衆党の柯文哲主席(党首)=2日未明、台北市(EPA時事)

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