船の安全守る「氷の航海士」=北極海「20年前から激変」 2024年09月17日 14時23分

「アイスナビゲーター(氷の航海士)」のデューク・スナイダー氏=16日、北極海
「アイスナビゲーター(氷の航海士)」のデューク・スナイダー氏=16日、北極海

 【みらい船上・時事】北極海を航行する船舶の安全に欠かせないのが、「アイスナビゲーター(氷の航海士)」と呼ばれる海氷域航海の専門家だ。北極観測を続ける海洋地球研究船「みらい」で、この役割を担うのがデューク・スナイダー氏(67)。カナダの沿岸警備隊で艦長などを務め、北極海を知り尽くす同氏は「この海は20年前と比べて激変した」と話す。
 英国の海事専門組織「航海協会」が認定するアイスナビゲーターの資格保持者は、世界で約300人とされる。スナイダー氏は、米海洋大気局(NOAA)が公表する海氷分布図や人工衛星画像、気象情報を分析して海の状況を把握。海氷観測を行いたい研究者の要望を聞き、行くことのできる海域を船長と研究者に提案するのが主な仕事だ。
 昨冬に凍ったばかりの厚さ1メートルほどの「一年氷」と違い、何年も解けず厚さ数メートルになった「多年氷」は密度が高く硬い。船と衝突すれば大きな事故につながる可能性がある。「氷は風に吹かれて刻々と変化するので、航海計画もそれに合わせて変更する必要がある」とスナイダー氏は語る。
 北極は他の地域の4倍の速度で温暖化が進むとされる。海氷も急速に減っており、経年の最小面積を見ると、北海道に匹敵する広さの海氷が毎年失われている計算だ。
 スナイダー氏も「温暖化により、この海域でこれまでになかった氷山が見られるようになった」と環境変化を指摘。「かつては氷河が解けて氷山が海に流れ出ても、多年氷が北米大陸北方のボーフォート海への流入を防いでいた。だが、夏季に多年氷がなくなったことで、一軒家くらいの大きさの小氷山がボーフォート海に現れるようになり、新たなリスクになっている」と話している。 

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