トランプ米政権・識者談話 2025年03月05日 18時35分

◇自画自賛で支持層固め
前嶋和弘・上智大教授(米国政治)の話 バイデン前政権の批判と自画自賛のオンパレードで、選挙演説の延長のようだった。内容面で目新しいものはほぼなく、全て想定内。大統領の議会演説は本来、自身の目指す政策実現のため議会を説得する場だが、そのような言葉は全くなかった。支持層が喜ぶ言葉ばかりを重ね、自己アピールに終始していた。
演説の冒頭で退場した議員のほか、一方的な演説に嫌気が差し、途中退席する議員もいた。演説内容には、大統領選の結果など正確でない情報も混ざっていた。議会がこれだけ分断された様子を見るのは初めてだ。
大統領選や議会選の結果でも示されたが、米国政治は未曽有の分断と拮抗(きっこう)の時代にある。民主党と共和党は健全な会話ができなくなっており、民主主義は大きく劣化している。
経済政策として他国への関税引き上げを自慢げに語っていたが、カナダやメキシコ、中国は対抗措置を取るとしており、さらなるインフレが想定される。インフレにより有権者の生活に悪影響が出るようになれば、共和党の中でもトランプ氏への支持が割れる可能性があり、注目される。
◇有言実行の覚悟示す
横江公美・東洋大教授(国際政治)の話 国際的な視点はあまりなく、米国民に対してのメッセージであるということがこれまでになく明確な演説だった。「アメリカ・ファースト(米国第一)とはこういうものだ」と数字を多く用い理論を武装化して示し、自分のやっていることは「当然正しい」と宣言。「言ったことは実行する」という気概が表れた発言で、4年間準備した「覚悟の化身」だと感じた。
冒頭で「この演説で民主党員が喜ぶことはない」と強調したことも、「自身のやり方が正しい」という鮮明な宣言だ。「強い大統領」を印象付けた一方、それを受け入れられない民主党議員がほとんど拍手しなかったり、退場させられた議員が出たりしたことは前代未聞で、分断し切っている状態は明らかだった。
安全保障についてほとんど発言がない中、パナマ運河への言及や、グリーンランドを巡って「国際安全保障」という単語を選んだことは明らかに中国を意識しており、中国が敵国であると読み取れた。また、ウクライナとの合意に関し「鉱物資源と安全保障に関する合意」と安保という言葉を使ったことは、ロシアへのメッセージになったのではないか。
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