豪、原潜計画の難航警戒=米関税やマスク氏査定が障壁 2025年04月11日 17時42分

米バージニア級原潜=3月16日、オーストラリア西部沖(AFP時事)
米バージニア級原潜=3月16日、オーストラリア西部沖(AFP時事)

 【シドニー時事】オーストラリア政府は、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に基づく豪軍への原子力潜水艦配備計画がトランプ米政権下で難航することを警戒している。高関税措置や、政府効率化を仕切る実業家イーロン・マスク氏の査定が障壁となり、費用増加や遅延の可能性が出てきたからだ。豪側は計画の着実な履行を求めていく方針だ。
 バイデン米政権当時の2023年3月のオーカス合意では、豪州が30年代に米バージニア級原潜を3~5隻購入し、その後米英豪が次世代型原潜を共同開発することが決まった。豪政府は今後30年間で3680億豪ドル(約33兆円)の費用がかかると見積もっている。
 米軍潜水艦の原子炉や搭載兵器は国産だが、機密性のない部分には輸入品も使われている。報道によると、米上院海上戦力小委員会のケーン委員(民主党)は潜水艦の鉄鋼・アルミの35%はカナダや英国などからの輸入品だと指摘している。今後、関税によって輸入部材の価格が上昇すれば、建造費が膨らむのは避けられない。
 一方、トランプ大統領は米造船業の活性化や軍艦調達の効率化策をまとめるようマスク氏に指示した。中国の軍備拡大に対応して米軍も潜水艦を増強する方針で、豪州への輸出が後回しにされる可能性は否定できない。また、豪州は米国の潜水艦建造拠点整備のため30億米ドル(約4300億円)を支出する予定だが、米側が増額を求めることもあり得る。
 アルバニージー首相は11日、記者団に「われわれは現行計画を支持している。これは豪州だけでなく米国の利益にもなる」と語り、予定通りの実行が望ましいとの考えを示した。 

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