イスラエル、市民に広がるガザ停戦要求=予備役の公開書簡に賛同続々―ネタニヤフ氏は取り合わず 2025年04月17日 18時36分

イスラエル首相公邸前で人質の解放と政府への不満を訴えるデモ隊=5日、エルサレム(AFP時事)
イスラエル首相公邸前で人質の解放と政府への不満を訴えるデモ隊=5日、エルサレム(AFP時事)

 【カイロ時事】イスラエルで、3月にパレスチナ自治区ガザへの攻撃を再開したネタニヤフ政権への反発が日増しに強まっている。イスラム組織ハマスに拘束された人質解放に向け、軍の予備役有志らが停戦を求める公開書簡を出し、これに多数の市民が賛同。しかし、ネタニヤフ首相からはハマス壊滅に向けた軍事作戦を弱める気配は感じられない。
 イスラエル軍が攻撃を再開した3月18日以降、ガザの死者は1690人超。人質解放への道筋が見えない一方で、ガザで多数の民間人が死亡し、イスラエル兵も戦闘で命の危険をさらし続ける事態に、イスラエル市民の厭戦(えんせん)気分が高まっている。
 従来は人質の家族や支援団体が停戦を訴えてきたが、4月に入って1000人近い空軍の予備役らがイスラエル指導部に宛てて、戦争反対を訴える書簡を発表。これに退役軍人や科学者などの有識者、元外交官、対外情報機関モサドの元要員らも次々に加わり、同様の訴えを行った署名者は1万人を超えたとされる。
 イスラエル国防省は、そうした公開書簡に署名した軍人らを解雇すると発表。ネタニヤフ氏は「内部からイスラエル社会を破壊しようとする過激派だ」と批判した。
 米紙ワシントン・ポストによると、初期のガザ攻撃に加わった予備役の軍医で、書簡作成にも携わったオル・ゴレン氏は「ハマス壊滅作戦に加わるのは正義だと誰もが思っていたが、今では軍事的な戦争目的がとうの昔に達成されていたと、人々は理解しつつある」と指摘。「今の戦争はネタニヤフ氏が生き残るためだけに続行されている」と憤った。
 ネタニヤフ氏を巡っては、連立政権を組む極右政党からの支持取り付けや、自身や側近の汚職疑惑から国民の視線をそらせるために戦争を利用しているとの批判が根強い。極右政党党首のベングビール国家治安相は1月、停戦合意に反対し他の議員と共に政権を離脱。3月にガザ攻撃を再開すると政権に復帰したが、ネタニヤフ氏はこの間、不安定な政権運営を強いられた。
 イスラエル首相府によると、ネタニヤフ氏は16日、人質解放交渉の担当者らに「人質解放に向けた歩みを続けるよう」指示した。しかし、その言葉とは裏腹に、15日にはガザを視察して現地に展開中の部隊を激励。ハマスへの軍事的圧力を強化すると力説した。戦争終結を願う市民の声は「無視」されている。 

海外経済ニュース