トランプ氏、進むメディア支配=AP通信を徹底攻撃 2025年04月26日 15時34分

4月16日、米ホワイトハウスが日々公表するトランプ大統領の翌日の予定と取材要領に、重大な変更が加えられた。トランプ氏が出席する主要イベントなどでの代表取材から、AP、ロイター、ブルームバーグの3通信社に割り当てられていた「枠」がなくなっていたのだ。
◇「取材は特権」
世界中のメディアなどに速報や記事を配信する通信社は、テレビやインターネットのない時代から歴代大統領の動向を刻々と内外に伝えてきた。このため、代表取材の構成メンバーに不可欠な存在とされていた。しかし、今後は新聞社と同じ枠に入ってローテーションを組むことになり、トランプ氏へのアクセスが激減する。
きっかけは1月20日の復帰後、トランプ氏がメキシコ湾を「アメリカ湾」に改称する大統領令に署名したことだった。全世界に約4億人の読者を擁するAPが湾の表記を改めなかったところ、ホワイトハウスはトランプ氏の執務室や専用機での質疑応答、記者会見から同社を閉め出した。
内外の報道機関数百社が加盟するホワイトハウス記者会は、直ちに「ニュースをどのように報じるか、ホワイトハウスが指図することはできない」と抗議。取材禁止の撤回を求めたが、レビット大統領報道官は「米大統領の執務室に入って質問するのは『権利』ではなく特権だ。誰を受け入れるかは、私たちが決める」と突っぱねた。
◇好意的報道を優遇
大学構内での言論の自由に関する擁護団体の弁護士タイラー・コワード氏は、AP問題について「政権の狙いは表記の変更だけではなく、メディアを選択する権限の確保だろう。その先には、自分たちに好意的な報道にアクセスを優先する意図がある」とみている。実際、レビット氏は報道官として最初の記者会見で、ネット媒体を中心とする新興メディアへ積極的に取材の機会を与えると表明して既存メディアをけん制した。
トランプ氏はほぼ連日、代表取材の記者と長いやりとりをし、政権をたたえるような問い掛けには「この男が好きだ」と満面の笑みで応じる。ホワイトハウスが「言論の自由をうたった憲法修正1条に反している」として連邦地裁に提訴したAPは公判で、報道陣がトランプ氏に「萎縮しているようだ」と証言。権力に対するメディアの姿勢が揺らいでいるとの心証を語った。
連邦地裁は4月、AP排除をやめるようトランプ政権に命令。APの記者は現場に復帰する権利を取り戻したが、同社が長年守ってきた最前線の「指定席」は剥奪されていた。(ワシントン時事)。
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