頼政権「激動の1年に」=台湾師範大・范世平教授 2025年05月20日 14時14分

【台北時事】台湾の頼清徳総統が就任して20日で1年を迎えた。「今年は台湾にとって、内政とトランプ米大統領の政策で激動の1年になる」と語る台湾師範大の范世平教授に、頼政権の課題や今後の展望を聞いた。
―台湾が輸出する半導体にトランプ氏は高関税を課す構えだ。頼政権は貿易交渉にどう対処するか。
台湾は米アラスカ州の天然ガスを買うと確約した。ただ、天然ガスに頼ると、中国が海上封鎖をした場合にエネルギー不足に陥る。そこで、米国の次世代原発を導入すれば、武器調達と同様に対米貿易黒字を減らせると考えている。頼氏は蔡英文前総統ほど「反原発」ではない。
―バイデン前米大統領は台湾防衛への介入を明言したが、トランプ氏は明らかではない。
真の意図を中国に分からせないよう曖昧にしているが、トランプ政権は台湾に友好的だ。政策を実行する「親台」のルビオ国務長官やヘグセス国防長官が重要。安全保障上の影響はない。
1期目のトランプ氏と後任のバイデン氏は、政党は違うが「台湾は防衛力を高める必要があり、自ら守る決心がなければ米国は派兵しない」という同じ信号を発していた。このため蔡氏は防衛力を強化し、義務兵役期間を以前の4カ月から1年に延長した。頼氏も中国の浸透を防ごうとしている。頼氏の対中強硬姿勢について、米国は自国の利益にかなうため承認している。
―米国は中国と取引して台湾を捨てるのではないかという「疑米論」が広がっている。
台湾には「疑米論」が確かに存在するが、少数意見だ。(最大野党の)国民党支持者の一部が心配しているが、主流の民意ではない。そもそも国民党も昔から「親米」であり、台湾に反米感情はない。
―立法院(国会)は与党の民進党が過半数に6議席届かず、国民党系立法委員(国会議員)35人のリコール(解職請求)運動が行われている。
中国に対抗して台湾を守る必要があるのに、国民党の立法委員は防衛予算を削減し、中国に協力した。このためリコール運動につながった。解職の是非を問う投票は約30人を対象に行われ、15人ほどがリコールされる可能性がある。立法院の構成は完全に変わる。
―頼政権の今後の課題は。
経済がカギを握る。多くの若者が株を買っており、株価が下落すると消費に影響する。株価が上がれば頼氏の支持率も上昇する。頼政権は一定の経済成長を維持する必要がある。
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