ウクライナ、ロシアの出方見極め=直接協議から1週間―次回開催は不透明 2025年05月24日 14時12分

ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、両国が16日に直接協議して1週間余り。仲介に意欲的だったトランプ米大統領はこの間、双方の首脳と電話会談し、停戦などの条件を「当事国間で話し合う」との立場にトーンダウンした。戦場で劣勢のウクライナは、自国に不利な形で事態が進むことを警戒。ロシアの出方を見極める構えで、次回協議を開けるかは不透明だ。
◇あやふやな「覚書」
「(両国が停戦の条件を交換後に)協議を続けるのが適切だ」。3年ぶりとなったトルコ・イスタンブールでの直接協議後、ロシア代表団を率いるメジンスキー大統領補佐官はこう表明した。
直接協議は、即時停戦を拒否するロシアのプーチン大統領が提案。軍事力で圧迫し、ウクライナの中立化など「成果」を得るための時間稼ぎとみられた。報道によると、ロシアは協議で停戦の条件として、一部を占領する東・南部4州からのウクライナ軍撤退を要求した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、トランプ氏と電話会談後に記者会見。プーチン氏が当事国間で「覚書をまとめる」と約束したことに触れ、ウクライナ軍撤退を和平の条件とするなら容認しないとけん制した。その上で、停戦に対する「本気度」を試すべく、ロシアの覚書案を待つ考えを示した。
ロシアのペスコフ大統領報道官は21日、「覚書に関する作業は活発に行われている。引き延ばしは誰の利益にもならない」と発言。一方、両国で調整する覚書と、直接協議で突き合わせる停戦の条件は「別」というあやふやな説明に終始した。覚書を交わす期限も決まっていないとし、和平への道筋をぼかした。
◇6月にバチカンで?
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は21日、トランプ氏が19日に欧州首脳らとの電話会談で、次回の直接協議がローマ教皇庁のあるバチカン市で開催されるとの見通しを語ったと報じた。関係筋によれば、6月中旬にも見込まれるという。
トランプ氏自身も電話会談後にSNSで、ローマ教皇レオ14世が協議場所の提供に「非常に関心がある」と紹介した。ただ、ペスコフ氏は21日、教皇庁の仲介努力に謝意を示しつつ、具体的な提案はまだなく、次回開催地も決まっていないと述べるにとどめた。
ゼレンスキー氏は18日、就任式を終えた教皇とバチカン市で会談。19日の記者会見では、中立的な協議の開催地候補としてトルコ、スイスに加えてバチカン市を挙げた。また、直接協議はロシアに主導権を握られかねない2国間でなく、米欧を加えた多国間で実施すべきだと主張。とりわけ対ロ追加制裁を決めた欧州連合(EU)諸国を関与させ、プーチン政権への圧力を強めたい意向だ。