中国、対米でよみがえる毛沢東=「持久戦論」に再び脚光 2025年05月25日 14時12分

毛沢東の肖像画=2022年3月、北京の天安門(AFP時事)
毛沢東の肖像画=2022年3月、北京の天安門(AFP時事)

 【北京時事】米中貿易戦争が長期化の様相を呈する中、中国で建国の父、毛沢東の言葉や論文「持久戦論」が脚光を浴びている。トランプ米政権は今月、対中追加関税を大幅に引き下げたが、緊張緩和は一時的との見方が強い。習近平政権には、英雄視される毛の教えを利用して愛国心をあおり、求心力を維持する狙いがありそうだ。
 「米国は張り子の虎だ。はったりを信じるな。突けば穴が開く」。中国外務省の報道官は4月11日、X(旧ツイッター)に毛の1960年代の言葉を英語で投稿。その前日には、毛が50年代の朝鮮戦争時に米国への「完全勝利」を目指して戦うよう訴えた演説の動画を上げた。北京市共産党委員会の機関紙、北京日報(電子版)は先月28日、「今こそ持久戦論を読み返そう」と題した論評を掲載した。
 毛が持久戦論を発表したのは日中戦争さなかの38年。戦争を「防御」「対峙(たいじ)」「反撃」の3段階に分け、時間をかけて徐々に状況を有利に変えるよう説く。悲観論にも楽観論にも傾かず、根気強く戦うことで最終的な勝利を収められるとしている。北京日報は、抗日戦と現在の米中対立を「同一視はできない」としつつ、毛の戦略的ビジョンは学ぶ価値があると強調した。
 持久戦論が注目されたのは今回が初めてではない。米中貿易戦争に火が付いた第1次トランプ政権時代にも再評価の動きがあった。2020年7月の党政治局会議では、習総書記が対米政策などを念頭に「われわれの直面する多くの課題は中長期的なものであり、持久戦的観点から捉えなければならない」と檄(げき)を飛ばした。
 第1次トランプ政権の対中経済圧力から教訓を得た習政権は、輸出先の多角化を推進。米国に代わるマーケットとして、東南アジアをはじめとする新興国市場の開拓を急いだ。科学技術で他国に依存しない「自立自強」を進め、官民挙げて人工知能(AI)やロボットといったハイテク産業を強化している。いずれも、毛と並ぶ終身指導者の地位を視野に入れた習氏の「持久戦的観点」からの対米戦略だ。 

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