インドで日本の戦争映画制作=監督、「語らなかった祖父」思い―戦後80年 2025年05月26日 06時10分

【コルカタ(インド)時事】インドに留学中の映像作家佐々木美佳さん(32)=福井県鯖江市出身=が太平洋戦争を題材に短編映画を制作した。祖父は悲惨を極めた敗走で知られる「インパール作戦」に加わった部隊に所属。制作を通じ、祖父の辛い体験に思いをはせた。
タイトルは「ブーゲンビリアの夢」。出征で生き別れた夫婦が手紙を通じて交流し、夢の中で再会する物語だ。佐々木さんの地元、福井県の女性が戦地に赴いた夫に実際に送った手紙をまとめた本「戦地で生きる支えとなった115通の恋文」(稲垣麻由美著)から着想を得た。
東部コルカタにある国立映画学校に日本人として初めて在籍。先の戦争ではインドも戦地となったこともあり、終戦80年に合わせ企画した。「どれほどの若人が家族や好きな人と会えず亡くなったのか。新しい世代として、この地で亡くなった日本人や、日本が他の国にしたことを考えるのは意義がある」と話す。
クラウドファンディングで資金を調達。日印の役者を集め2月に撮影し、編集作業を進めている。公開は未定だが、6月以降、日本を含めた各国映画祭への出品を目指している。
祖父の寿さんは旧日本軍の歩兵第67連隊第2機関銃中隊に所属。1995年に74歳で亡くなった。旧満州(中国東北部)にいたころ、日本の親族に手紙を送っていて「筆まめ」だったことをうかがわせるが、戦時中の手紙は残していない。インパール作戦の話も一切しなかった。
ただ、残された手帳から、多くの戦友が現在のインド北東部インパール手前で戦死していたことが分かった。寿さんも付近まで行軍した可能性が高いといい、「相当なトラウマだったのでは」と推察する。
5月上旬にはインドと隣国パキスタンの武力衝突が発生。「(作品の)重みが違ってきた。本当にやめてくれという気持ち。戦争は見たくない」と、平和への願いを新たにした。
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