「親中」議員の排除失敗=深まる与野党対立―台湾 2025年07月26日 21時25分

25日、台湾・台北市での国民党の集会で、立法委員(国会議員)のリコール(解職請求)反対を訴える参加者ら
25日、台湾・台北市での国民党の集会で、立法委員(国会議員)のリコール(解職請求)反対を訴える参加者ら

 【台北時事】台湾最大野党・国民党立法委員(国会議員)の排除を目指したものの、失敗した26日の大規模リコール(解職請求)投票の背景には、「反中」の与党と「親中」とされる野党の深い亀裂がある。与党・民進党の頼清徳総統は中国に対抗するためオール台湾の「団結」を訴えるが、「民進党は民衆と共に歩む」としてリコール運動支持も表明。今回の投票を機に与野党対立は一層激化している。
 5月、台北市近郊の新北市の駅前。与党を支援する団体が、一帯を地盤とする国民党立法委員のリコール投票実施に必要な署名を集めていた。署名に応じた会社員男性(61)は、立法院(国会)で多数派の国民党が主導した今年の防衛予算の削減・凍結を問題視。「国民党は大陸(中国)の独裁政権に寄り添っている」と断じた。
 頼氏は2月、防衛予算の域内総生産(GDP)比を3%以上に高める方針を発表した。台湾の防衛費増額を迫るトランプ米政権との関係を強化し、頼氏を「台湾独立分子」と敵視する中国をけん制する狙いだ。頼政権が提案した予算が削減・凍結されると目算が狂い、中国を利する結果となる。
 リコール推進団体は今月24日、台北市中心部で大規模集会を開催。参加した会社員の張佳怡さん(47)は「防衛予算を削減し、台湾の利益を顧みない」と国民党を非難した。
 一方、国民党が翌25日に同じ場所で主催した大規模集会で、同党の韓国瑜・立法院長(国会議長)は「リコールが成功すれば民進党の一党独裁に後戻りする」と主張。詰め掛けた参加者は「頼清徳は辞めろ」と連呼した。北部・新竹県の会社員女性(52)は「民進党は税金の無駄遣いが多過ぎる」と批判する一方、与野党対立で「社会が引き裂かれており心配だ」と話した。
 台湾社会の分断は中国に付け入る隙を与える。中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の報道官は6月、台湾のリコール運動に関し「あらゆる方法で野党を弾圧している」と民進党を糾弾し、国民党に加勢した。台湾で対中政策を所管する大陸委員会は「中国共産党はリコール投票に赤裸々に介入している」と警戒感を示す。 

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台湾の国民党立法委員(国会議員)に対するリコール(解職請求)推進団体が開いた集会で、議員の罷免を訴える参加者ら=24日、台北市
台湾の国民党立法委員(国会議員)に対するリコール(解職請求)推進団体が開いた集会で、議員の罷免を訴える参加者ら=24日、台北市

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