イラン、「国際協調」に逆風=制裁解除めど立たず―改革派大統領1年 2025年07月27日 06時24分

イランのペゼシュキアン大統領=6月3日、テヘラン(大統領府提供)(EPA時事)
イランのペゼシュキアン大統領=6月3日、テヘラン(大統領府提供)(EPA時事)

 【イスタンブール時事】イランでペゼシュキアン大統領が就任して28日で1年。19年ぶりの改革派の大統領となったが、就任直後からイスラエルの軍事圧力にさらされ、対立する保守強硬派の反発も強まっている。持論の国際協調路線は逆風に遭い、公約した米欧との対話による経済制裁解除も実現のめどは立っていない。
 イランでは最高指導者ハメネイ師が国政の全権を握る。大統領は行政府の長にすぎず、欧米との融和に懐疑的なハメネイ師の意向に反する政策遂行は不可能だ。それでも、昨年の大統領選ではハメネイ体制への批判や社会の閉塞(へいそく)感への不満の受け皿として支持を集め、欧米との関係改善による経済好転への期待が高まった。
 ただ、この1年は異例の国難が続いた。昨年7月にはペゼシュキアン氏の就任宣誓式のためイランを訪れたイスラム組織ハマス最高指導者(当時)のハニヤ氏が、首都テヘランでイスラエルが関与したとされる作戦で死亡。同10月には、親イラン組織幹部殺害への報復にイランが行った攻撃への対抗措置として、イスラエルによる本土空爆を受けた。
 今年1月の第2次トランプ米政権発足後は、核問題解決に向けて交渉を模索。4月以降、米国との間接形式での高官協議を5回行ったものの、6月にイスラエルがイランの広範な地域で核施設や軍事インフラなどを空爆。核施設攻撃には米国も加わり、対話機運は吹き飛んだ。
 ペゼシュキアン氏は「地域や世界との建設的対話」を目指すが、国難の下で主張はかすんでいる。保守強硬派は「弱腰」と非難する一方、支持基盤の改革派も、多くが「国家安定のための団結」を訴え、保守強硬派との対決を避けようとする傾向が強まっている。
 米シンクタンク「スティムソン・センター」のバーバラ・スラビン研究員は「ペゼシュキアン氏への期待は常に低かった。地域情勢が急激に悪化する中、目立った成果はない」と指摘している。 

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