中国経済けん引役の面影なく=人口減、不景気に悩む旧満州 2025年08月24日 15時06分

旧浪速通り(現中山路)沿いの建物。テナントを募集している=5日、中国遼寧省瀋陽
旧浪速通り(現中山路)沿いの建物。テナントを募集している=5日、中国遼寧省瀋陽

 1945年の旧満州国崩壊から80年がたった。中国政府は49年の建国直後、当時の友好国ソ連に近く、産業基盤が整っていた旧満州国の主要部分に当たる東北3省を経済のけん引役とする方針を決定。だが、78年に改革開放政策が始まると、中国経済の重心は香港に近い南部の広東省などへ移行した。東北地方は人口減少と景気低迷に悩まされている。
 「ここに残っていても仕事はないので、誰もが外に出る」。8月上旬、東北地方で最大都市の遼寧省瀋陽を訪れると、男性がこう打ち明けた。同省と吉林省、黒竜江省を合わせた東北3省の総人口は2011年から減少に転じた。中国全体よりも11年早い。
 瀋陽駅(旧奉天駅)から東に向かう中山路(旧浪速通り)沿いには歴史的な建物が立ち並ぶ。一帯は今でも中心市街地の一角を占めるものの、目立つのはテナント募集の張り紙だ。
 東北財経大学の専門家によると、東北3省では建国以降、政府主導の大型投資を背景に、重工業を主体とする経済が大きく成長した。しかし、改革開放で外資の進出が増えたため、競争に敗れる企業が続出。生産性が低い国有企業に頼らざるを得ない東北経済は窮地に陥った。近年は不振が一段と深刻化している。
 資源の枯渇も向かい風だ。中国経済を支えた黒竜江省の大慶油田の生産量は減少局面に入っている。東北地方は石炭の主要生産拠点の一つだが、北西部の新疆ウイグル自治区などで新規炭鉱の開発が進む中、エネルギー産業における存在感は低下した。
 「東北地方は困難と課題に直面している」。国営新華社通信は今年2月、厳しい現状を認める習近平国家主席の発言を紹介した。8月上旬の大慶市内では若者の姿は目立たず、タクシー運転手の女性は「かつての強みが次々と弱みに変わった」と肩を落とす。政府は、寒冷地の特徴を生かした「氷雪経済」の振興やハイテク産業育成に期待するが、先行きを楽観する声は少ない。(瀋陽=中国遼寧省=時事)。 

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中国黒竜江省大慶市内にある石油採掘ポンプ=3日
中国黒竜江省大慶市内にある石油採掘ポンプ=3日

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