リーマン・ショック

 2008年9月のリーマン・ブラザーズの経営破綻は、その後経験をしたことのない株価暴落を招きましたが、株価下落はその1年前2007年7月から始まっていました。下表、日経平均の動きをご参照ください。そして、2009年に公表された「平成21年度年次経済財政報告」では、株価の波動と合わせるように、リーマン・ブラザーズ経営破綻までの前半(第1段階)と破綻後の後半(第2段階)とで経済情勢が大きく異なることを説明しています。今回は、前半は、上記報告をベースにまとめてみました。


1.世界同時不況

  • 2007年のアメリカの住宅バブルの崩壊をきっかけに、サブプライム住宅ローンなどの資産価格が暴落、多額の不良債権発生
  • 前半(第1段階)は、アメリカを中心とする金融不安、景気の減速、原油・原材料価格が上昇、日本は緩やかな景気の弱まりを示す

 後半は(第2段階)は、米国金融不安が世界的な金融危機に発展、世界景気は一段と下振れ、世界同時不況に。日本経済も一変、外需の大幅な減少に伴い企業部門が急速に悪化した。


2.当時の株価とドル/円相場

【図表】日経平均株価の動き(対数表示)(2005年8月~2009年7月)


【図表】ドル/円相場の動き(2005年8月~2009年7月)


  • ドル/円相場、2007年7月以降は米国における金融不安の高まりなどを背景に円高方向に振れ、2008年3月95.77円から反転するもリーマン・ブラザーズ経営破綻後、再度円高に振れ2008年12月には87.16円まで上昇しました。なお、前半はドルがユーロを含む主要通貨に対して減価した結果であるのに対して、2008年8月以降(後半)は、円の独歩高となりました。
  • 原油価格の高騰・急落。原材料価格、原油価格は大きく変動、WTIは2007年1月の1バレル=50.48ドルから、2008年7月には145.29ドルまで上昇。その5か月後の2008年12月には、33.87ドルまで急落。大まかには、前半(第1段階)は上昇、後半(第2段階)は大きく下げたことになります。


※サブプライム住宅ローン問題とは・・・

 サブプライム住宅ローンは、信用度の低い借り手向けのローン。問題は2007年~2009年にかけて米国で起きた住宅バブルのあとの不良債権化。サブプライム・ローンへの投資を証券化して金融取引が行われていたので世界的な信用収縮に繋がりました。


3.当時の日本経済の動向

【図表】実質GDP成長率とその寄与度

(出所)平成21年度年次経済財政報告

 世界貿易が縮小する中で日本の輸出も減少しました。

【図表】主要国の輸出の推移と地域別輸出数量のグラフ

(出所)平成21年度年次経済財政報告

 上記は、第1-1-1図「実質GDP成長率とその寄与度、第1-1-2図「主要国の輸出の推移と地域別輸出数量のグラフ」(出所:平成21年度年次経済財政報告)です。この資料によると、リーマン・ショック直後から輸出の落ち込みがGDPのマイナス成長を招きました。その中で、主要国の輸出よりも落ち込みが大きく、また米国、EU向けの落ち込みが大きかったことを示しています。


4.各国中央銀行の対応および日本銀行における対応

【図表】日米欧の中央銀行のバランスシート

(出所)平成21年度年次経済財政報告

  • 2008年10月8日、6か国の中央銀行が同時に政策金利の引き下げを実施しました。(日本は含まず、2008年10月末、12月政策金利の引き下げ、金融市場の安定確保、企業金融支援策について様々な処置、金融機関保有の株式の買入)
  • その後も、欧米で断続的な利下げが実施され、2009年6月現在、米国0~0.25%、ユーロ圏1.0%、イギリス0.5%の水準になりました。
  • 加えて、欧米は、銀行間市場の機能が低下している中で、流動性供給を確保するための処置を実施。中央銀行のバランスシートは拡大しました。(日本は欧米のような
    バランスシートの急激な拡大はみられなかった)


5.法人企業統計

【図表】企業業績の推移

(出所)平成21年度版法人企業統計より作成(金融業、保険業を除く)

 サブプライム・ローン問題を受け、2008年後半は世界同時不況となりました。日本企業の業績は大きく落ち込み、法人企業統計によると、2009年3月期の経常利益は、前期比で▲40.6%の減益、2010年3月期も▲6.2%の減益となりました。2011年3月期は回復しましたが、リーマン・ショック前の水準に戻ることはなく、この水準への回復はアベノミクスを待つことになります。


6.業種別株価指数の動き

【図表】東証業種別指数の動き(リーマン・ショック時の下落率上位)


 上表は、東証業種別株価指数の動きです。前半(第1段階)、後半(第2段階)、通算しての下落率を算出し、通算で下落率の高い順に並べています。後半(第2段階)で下落率が高かった業種が、通算も下落率が上位にあります。(なお、表の最上段にある「週末日付」のもとにある各業種の指数値は、該当週の高値あるいは安値を記載、下落率等を算出しています。)

 なお、下落率が小さかった業種は、通算でみると空運の▲25.5%を筆頭に、電気・ガス、陸運、紙パルプ、医薬品(▲43.5%)が上位で、ディフェンシブ銘柄で占められています。

【図表】2008年の個別銘柄の株価(2007年末と2008年末の比較)

  • 上記は、リーマン・ショックがあった2008年の年間騰落率分布。東証第一部市場上場1732社の分布。上昇率100%以上の5社を除いています。5社を除いての平均上昇率は、▲33.3%、年間騰落率がマイナスになったのは1553社で、89.4%の銘柄が下落しました。
  • 2007年から下落が始まり、2009年に反転しましたが、2000年以降では、年間の騰落率マイナスの最大の年でした。


7.投資部門別売買動向

【図表】投資部門別株式売買動向(三市場、第一部・第二部)


【図表】主なマーケット・インディケータ(2008年5月~2009年1月)



(参考資料)

1.平成21年度年次経済財政報告(内閣府サイトへリンク)

2.マーケット・コメント(2008年10月14日) 


(2021年1月8日)