ルワンダへの移民移送法成立=総選挙前、政権浮揚効果は疑問―英国 2024年04月26日 16時47分
【ロンドン時事】英国に不法入国した移民をアフリカ中部ルワンダに強制移送することを定めた法律が25日、チャールズ国王の裁可を得て成立した。移民対策はスナク政権の優先課題の一つ。首相としては、今年後半に予想される総選挙に向け、「実績」としてアピールしたいところだが、支持率が低迷する中、政権浮揚につながるかは不透明だ。
成立を受け、物議を醸してきた移送計画がようやく動きだす。移送開始は7月ごろの見込み。英メディアによると、既に第1陣を乗せる飛行機が予約された。
英仏海峡を渡る移民の大量流入は英国で社会問題化し、政府は2022年、ルワンダへの資金援助と引き換えに不法移民を強制移送する計画を発表した。人道面などから反対論が続出したが、スナク首相は計画の法制化を追求。国論が二分する中、ルワンダを「安全な第三国」と位置付け移送計画を実行するための法案が今週初めに可決された。
首相が強制移送にこだわるのは、総選挙が近づく中、有権者の関心が高い移民問題で成果を出すためだ。与党・保守党は最大野党・労働党に支持率で大差を付けられている。首相は「世界的な移民の問題に根本的変化をもたらす」と強調し、保守党の支持拡大につながることを期待している。
だが、強制移送は、保守党内でも賛否が分かれ対立を深めた経緯があり、形勢挽回に結び付くかは微妙だ。政治評論誌ニュー・ステーツマンは「(法成立は)首相がようやく手に入れた勝利だが、威信を高めたとは言い難く、象徴的な勝利にすぎない」と分析した。