バイデン米政権、苦渋の選択=イスラエルへの弾薬輸送停止―ラファ本格侵攻を懸念 2024年05月09日 16時01分
【ワシントン時事】バイデン米大統領は8日、イスラエルへの軍事支援を巡り、弾薬の輸送を一部停止したことを認めた。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザの最南部ラファへの本格侵攻を強行し、市民の犠牲者をさらに増やすことを懸念。親イスラエル姿勢を鮮明にしてきたバイデン政権だが、苦渋の選択を迫られている。
「ガザでは多くの民間人が殺された」。バイデン氏は8日、米CNNテレビとのインタビューで、米国製爆弾でガザの犠牲者拡大を招いたとして、弾薬輸送を停止したと認めた。これに先立ち、オースティン国防長官も上院公聴会で「ラファで起きていることを踏まえ、短期的な軍事支援について見直している」と語り、輸送停止を明らかにしていた。
米メディアによれば、輸送停止の対象は無誘導爆弾「MK84」など3500発。MK84はその甚大な威力で一般市民を巻き添えにするため使用を控える声が国際社会で強まっている。オースティン氏も公聴会で「多くの二次被害を生む恐れがある」と懸念を示した。
イスラム組織ハマスとの衝突が始まった昨年10月以降、イスラエル軍はMK84を大量に投下。CNNが衛星写真で分析したところ、MK84によるとみられる爆発の痕跡が衝突後1カ月間で500カ所を超えた。密集地域での使用で犠牲者数は膨れ上がり、「無差別爆撃」に米国が関わっているとの非難につながった。バイデン政権の判断にはこうした批判をかわす思惑も透ける。
イスラエルへの弾薬輸送停止について、同国のエルダン国連大使は地元メディアに「非常に残念な決定で、いら立ちさえ覚える」と不満をぶちまけた。米議会でも「イランやその代理勢力をあおるだけだ」(共和党上院トップのマコネル院内総務)と非難する声が上がる。
バイデン政権が輸送停止に踏み切った背景には、イスラエルのネタニヤフ首相がハマスとの戦闘休止合意の有無にかかわらず、ラファ本格侵攻を強行する構えを崩していないこともある。
バイデン氏はCNNとのインタビューで、ガザ住民が避難する地域への軍事作戦を実施すれば「イスラエルの安全保障を見捨てることはしないが、戦争を行う能力は絶つ」と明言し、武器供与停止を警告した。ネタニヤフ氏の強硬姿勢に歯止めをかけることができるのか。バイデン氏は正念場を迎えている。