欧州歴訪、切り崩し図る=各国の温度差利用―中国主席 2024年05月10日 23時05分

握手する中国の習近平国家主席(左)と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長=6日、パリ(AFP時事)
握手する中国の習近平国家主席(左)と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長=6日、パリ(AFP時事)

 【北京時事】中国の習近平国家主席は10日、フランス、セルビア、ハンガリーの3カ国歴訪の日程を終えた。習政権は米国への対抗上、欧州との関係を重視。欧州では経済安全保障の観点から中国への警戒感が広がるが、習氏は各国の対中姿勢の温度差を利用し、個別の切り崩しを図った。
 「『中国の過剰生産問題』など存在しない」。習氏は最初の訪問地パリで、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長にこう言い放った。中国政府の補助金によって同国製電気自動車(EV)が欧州に大量流入するとの指摘を全否定し、相殺関税を検討するEUをけん制した。
 一方、米国と一線を画した独自外交を進めるマクロン仏大統領に対しては「ほほ笑み外交」を展開し、親密さをアピール。仏産コニャックへの高率な関税導入を当面見合わせる意向を示したほか、中東情勢やロシアによるウクライナ侵攻を念頭に、今夏のパリ五輪期間中の「全世界での戦闘停止」を訴え、マクロン氏に花を持たせた。
 続いて訪れたセルビアとハンガリーは、いずれも巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて中国との結び付きが強い。ロシアに対しても融和的だ。
 中国国営中央テレビは、セルビア政府庁舎前で1万人超の市民が歓迎の声を上げる映像を繰り返し流し、習氏の国際的権威を印象付けた。習氏は、ブチッチ大統領に貿易拡大やインフラ投資の継続を約束。コソボの分離独立を認めないセルビアの主張を「支持する」ことも強調した。
 習氏がセルビア入りした7日は、1999年に北大西洋条約機構(NATO)が当時ユーゴスラビアの首都だったベオグラードを空爆した際、米軍が中国大使館を誤爆した事件から25年の節目に当たった。
 セルビア訪問自体にNATO批判の意味合いを込める一方、習氏は旧中国大使館跡地での追悼は行わなかった。米国への過度の刺激を避け、EU加盟を目指すセルビアの立場に配慮したとみられる。
 ハンガリーでオルバン首相と会談した習氏は、両国関係の格上げを宣言。EVや鉄道、原発など多分野での協力文書が交わされた。ハンガリーは7月からEU議長国を務める。経済協力の見返りとして、中国・EU間の「橋渡し役」として動いてもらいたいという習政権の思惑が透ける。
 ハンガリーはNATO加盟国でありながら、ウクライナへの武器供与を拒否。欧州諸国との関係を重視しつつロシアとの友好も維持する立ち位置は、中国と重なる。
 今月中旬には、ロシアのプーチン大統領が訪中を計画している。習氏は今回、欧州とロシアの双方に影響力をアピールできる外遊先を選んだと言えそうだ。 

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ベオグラードのセルビア政府庁舎前で歓迎を受ける中国の習近平国家主席(手前)=8日、セルビア大統領府提供(AFP時事)
ベオグラードのセルビア政府庁舎前で歓迎を受ける中国の習近平国家主席(手前)=8日、セルビア大統領府提供(AFP時事)

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