ラファで新たに退避勧告=イスラエル、作戦拡大を承認―30万人既に避難 2024年05月11日 20時16分
【カイロ時事】イスラエル軍は11日、パレスチナ自治区の最南部ラファ東部に出していた退避勧告に新たな地域を追加し、住民らに避難を呼び掛けた。イスラエル政府は9日夜の治安閣議で、ラファでの軍事作戦拡大を承認したもようだ。イスラム組織ハマスとの戦闘休止や人質解放を巡る交渉が行き詰まる中、ハマスへの軍事的圧力を強める狙いとみられる。
イスラエル軍によると、これまでに約30万人がラファから避難した。民間人保護の措置を取ったとして、ラファ東部で激しい攻撃に出る恐れもある。
これに先立ち米政府は10日、議会に提出した報告書で、イスラエル軍が米国製武器を国際人道法に違反する形で使用している可能性を指摘。バイデン大統領もイスラエルが本格的なラファ侵攻を実施すれば、武器供与を停止すると警告し、けん制している。
作戦拡大について、複数の情報筋は米ネットメディア「アクシオス」に、バイデン氏が考える「レッドライン(譲れない一線)」を越えない規模だと説明した。ただ、ネタニヤフ政権はラファをハマス最後の拠点と見なし、攻撃の手を緩めない構え。イスラエル軍は7日にラファで限定的な地上作戦を開始し、これまでに武器密輸を阻止するとして対エジプト境界の検問所を掌握した。
一方、地元メディア「タイムズ・オブ・イスラエル」は当局者の話として、多くのハマス戦闘員がラファを離れ、ガザ北部などに再集結していると伝えた。軍は11日、新たな作戦に備えガザ北部でも住民に退避を勧告。治安当局者は、「いたちごっこ」の状況が続くとの見方を示した。
イスラエルが最大の標的とするハマスのガザ地区トップ、ヤヒヤ・シンワル氏もラファでなく、南部ハンユニスの地下トンネルに潜んでいる可能性があるという。
エジプトで行われたイスラエルとハマスによる間接的な休戦交渉は9日に成果なく終了した。ハマスは11日に人質男性の映像を公開し、イスラエル軍の空爆で死亡したと主張。イスラエルの世論に訴え、ネタニヤフ政権を揺さぶる意図があるとみられる。交渉再開を目指す仲介国カタールは首都ドーハで、同じく協議を橋渡しするエジプトと米国の高官と会合を開く意向だと報じられている。