ノルウェー国防相、中国の北極活動を注視=ロシアとの連携警戒―第1部「二つの北極」(6)〔66°33′N=北極が教えるみらい〕 2024年09月18日 07時30分

インタビューに答えるノルウェーのグラム国防相=4日、東京都千代田区
インタビューに答えるノルウェーのグラム国防相=4日、東京都千代田区

 来日したノルウェーのグラム国防相は、大国の覇権争いが激化する北極で、中国がロシアと連携して権益拡大やプレゼンス強化を図る可能性があり、「北極における中国の活動を注視している」と述べた。東京都内で時事通信のインタビューに応じた。ノルウェーは国土の一部が北極圏内にある。

 グラム氏は、ウクライナ侵攻で米欧と対立するロシアが「ますます中国に依存しているように見える」と指摘。「これまでのところ、中国は研究調査に特に興味があると理解している。商業的な関心もあるかもしれない」とした上で、「われわれの地域で軍事協力に発展することは望まない」と強い警戒感を示した。
 ノルウェー政府は7月、北極圏のスバルバル諸島にある私有地の売却差し止めを発表。中国などによる買収を防ぐためとみられる。同月、中国のためスパイ活動を試みたとしてノルウェー人の男が逮捕されたと報じられた。グラム氏はこれらの事案について具体的には話せないとする一方、「われわれはロシアや中国からより多くの圧力を経験している。これは公になっていることだ」と述べた。

 ロシアについては「欧州とノルウェーの安全保障上の最も重大な脅威」と断言。ノルウェーとの国境に近いロシア北西部コラ半島は、ロシア核戦略の中核を担う北方艦隊の拠点があり、グラム氏は「国境近くに、西側諸国以外の核戦力が最も集中している場所がある」と脅威を訴えた。
 ウクライナ侵攻を受けたスウェーデンとフィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟により、NATO加盟国で囲まれたバルト海での活動に制約が生じたため、ロシア軍にとって北極海域の戦略的重要性が増しているとグラム氏は分析。こうした状況に対応するため、ノルウェーは北極での軍事力を高めていると説明した。

 ▽ビョルン・アーリル・グラム氏
 ビョルン・アーリル・グラム氏 72年、ノルウェー中部ステインヒェル生まれ。通信大手テレノール勤務を経て政界入りし、07~20年にステインヒェル市長。21~22年、地方自治・地域開発相。22年4月に国防相就任。中道政党の中央党所属。 

海外経済ニュース