チベット高僧、ベトナムで謎の死=同化政策に抵抗し中国拘束 2025年07月06日 18時51分

チベット仏教指導者トゥルク・フンカル・ドルジェ師(ダライ・ラマ法王日本代表部事務所ホームページより・時事)
チベット仏教指導者トゥルク・フンカル・ドルジェ師(ダライ・ラマ法王日本代表部事務所ホームページより・時事)

 【ニューデリー時事】チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が2日、伝統的な「輪廻(りんね)転生」に基づく後継者選定を明言した。その影響力を警戒する中国政府がチベットへの弾圧を強める恐れがある。最近も同政府の関与が疑われる高僧の不審死が起きていた。
 インド北部ダラムサラに拠点を置くチベット亡命政府などによれば、著名な同教指導者トゥルク・フンカル・ドルジェ師(56)が3月25日、ベトナム最大都市ホーチミンのホテルで現地警察と中国の諜報(ちょうほう)員に身柄を拘束された。3日後、現地の公安事務所に引き渡され、その日のうちに死亡した。
 ドルジェ師は中国青海省ゴロク・チベット族自治州を拠点にチベットの言語や文化の保存活動に熱心に取り組み、中国政府の同化政策に抵抗してきた。
 昨年、同政府が認定したチベット仏教ナンバー2のパンチェン・ラマ11世を同師の僧院に迎えるよう地元当局から指示されたが、拒否。同8月に当局の取り調べを受け、指紋の提出を強いられた。ベトナムで潜伏生活に入ったのはその約1カ月後だった。
 中国当局者は僧院関係者に死亡したことを伝えたが、遺体の返還や死因に関する詳細な情報は提供しなかった。遺体は遺族の同意なくホーチミンで火葬されたという。
 亡命政府のペンパ・ツェリン首相は時事通信の取材に「(ドルジェ師は)高齢ではなく健康だった。中国による国境を越えた弾圧の典型例が頭に浮かぶ」と指摘。亡命政府は不審死に対する中越両国の説明と、独立した調査を求めている。 

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チベット仏教高僧の死を受け、在インド・ベトナム大使館前で抗議する人々=4月14日、ニューデリー(EPA時事)
チベット仏教高僧の死を受け、在インド・ベトナム大使館前で抗議する人々=4月14日、ニューデリー(EPA時事)

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