高関税、市場が迫った軌道修正=柔軟姿勢も、経済に暗雲―トランプ政権100日 2025年04月28日 15時46分

 【ワシントン時事】トランプ米大統領が矢継ぎ早に打ち出した高関税政策は、金融市場の混乱を招き、軌道修正に追い込まれた。目玉政策の相互関税は90日間の一部停止。高関税をかけ合う中国との緊張緩和を模索し、産業界の意見に耳を傾ける柔軟姿勢も見せる。景気悪化とインフレへの懸念は強まっており、世界経済に暗雲が漂っている。
 「中国への追加関税はそこまで高くならない。大きく下がるだろう」。トランプ氏は22日、ホワイトハウスで記者団の取材を受けると、対中追加関税を引き下げる可能性に直接言及した。これまでも交渉の席に着くよう促し、秋波を送ってきたが、この日は一歩踏み込んでみせた。
 市場ではそのころ、9日に相互関税を一部停止に追い込んだ株式、債券、ドルが同時に売られる「米国売り」が再燃。基軸通貨のドルや、安全資産として買われるはずの米国債も売られ、市場の緊張感が高まっていた。
 米連邦準備制度理事会(FRB)議長の解任をちらつかせ、対中貿易戦争へと進むトランプ政権への不信感が拡大。市場が再び、中国との緊張緩和に取り組むようトランプ氏の背中を押した可能性が高い。
 トランプ氏は就任以来、鉄鋼・アルミニウム、自動車への追加関税、ほぼ全世界対象の相互関税の一律10%分を発動し、半導体、医薬品、木材などへの追加関税に向けた手続きも始めた。例外を認めない強硬姿勢を取り、高関税によって輸入コストを高め、製造業の米国内への回帰を促すと訴えてきた。
 中国とは高関税の応酬となり、米国は145%、中国は125%の追加関税を互いの輸入品にかけ合い、事実上の「禁輸状態」(ベセント財務長官)に陥った。
 2日の相互関税発表後、金融市場が激しく動揺。産業界からも悲鳴が上がると、トランプ氏は軌道修正に動いた。半導体への関税について、アップルのクック最高経営責任者(CEO)から意見を聞くと表明。一連の関税政策を巡り、インフレを懸念する自動車や小売りなどの産業界とも対話を重ね、日本を含む各国・地域との交渉にも着手した。
 それでも高関税が世界的な景気悪化につながるとの懸念は強い。国際通貨基金(IMF)は、2025年の世界貿易の伸びが1.7%と、前年から半減すると予測。世界経済、米経済ともに成長率見通しを大幅に引き下げた。
 IMFチーフエコノミストは「すべての国が、貿易政策の不確実性の高まりによる悪影響を受ける」と警告。米国では「生産と生産性を恒久的に低下させ、一時的な物価上昇圧力」を生み出すと指摘し、悪影響は米国に返ってくると話している。 

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