FRBのテーパリング開始はいつか 2021年10月11日 17時04分

FRBのテーパリング開始はいつか

[ゴールデンチャート社] 2021年10月11日

 FRBの資産購入ペース減額(テーパリング)の開始は「年内の開始は固いが、11月開始は五分五分」と見ている。FOMCは年内2回(11月2~3日、12月14~15日)開催される。

 9月22日のFOMC記者会見の冒頭、パウエル議長はテーパリング開始の判断に関連して次のように発言。

  • インフレ率は上昇しており今後数カ月間はこの状態が続くと思われる
  • 供給のボトルネックの影響は予想以上に大きく長続きしていて今年のインフレ予想は上方修正された
  • 予想通りの経済の進展が見られれば、資産購入のペースを早急に調整する必要がある
  • FOMC参加者は緩やかながテーパリングが適切と考えている。テーパリングの終了は来年半ばを想定

 8月27日のジャクソンホールでのパウエル議長の講演で、「7月のFOMCで私を含めほとんどのメンバーが、米国経済が予想通りの進展を見せれば、今年中に資産購入ペースの縮小を開始することが適切との見解を示した」と議長自身の言葉として述べている。

 FOMCが考えるテーパリング開始の条件はインフレと雇用の数値がFOMCの判断基準に合致すること。インフレは急上昇した後、現状高止まりとなっていて条件を満たしていると考えられるが、問題は雇用で、8月期の雇用統計では非農業部門の就業者数は23.5万人増(改定値36.6万人増)と予想を大きく下回った。これが9月のFOMCでテーパリング開始が見送られた主な要因とされている。10月7日発表の9月期の雇用統計は、

  • 非農業部門の就業者数は19万4000人増で予想を大幅に下回った、公的部門の雇用が減少
  • 失業率は4.8%、前月比0.4%減、1年半ぶりの低水準に改善

だった。こうした雇用状況がFOMCの「予想通りの経済の進展が見られれば・・」に合致するのか、見解が分かれるところ。9月の雇用統計は、就業者数増は確かに低水準であったものの、失業率は改善をしている。雇用は改善に向けた軌道を逸脱はしていないと見られる。

 米国経済は、GDP成長率の鈍化、インフレの長期化、雇用の改善の遅れが表面化している。FOMCのテーパリング開始は、パンデミックからの経済復興に伴う混乱に直面し、難しい判断に迫られると想定される。FOMCの経済見通しでは、2021年のGDP成長率は6月時点の7%増から5.9%増に下方修正されている。一方で、需要の急増による供給不足やサプライチェーンの問題を抱え、インフレ率は高止まりとなっている。FRBが当初想定していた「この物価上昇率の急増は、一時的であり、年内には収束に向かう」とするシナリオは崩れ、「インフレは長期化する」との見通しに変化している。8月から9月にかけてのデルタ株の感染拡大が想定以上に酷く、ここに来てワクチン接種の進展も滞っている。

 FOMCは経済見通しの中で、インフレを個人消費支出(PCE)物価指数で評価する。10月1日発表の8月期のPCE物価指数は、前年同月比4.3%増、前月比0.8%増、食料品とエネルギーを除くコアPCEは前年比3.6%増、前月比0.3%増と高止まりし、FRBが安定的なインフレ目標として掲げる2%を遥かに上回っている。

 FOMCは市場と対話しながら十分な時間を取って予告をし、テーパリング開始や利上げ開始時期を慎重に探っていく姿勢を貫いてきた。利上げについても慎重で、パウエル議長は記者会見の中で「今後の資産買入の縮小のタイミングとペースは、利上げのタイミングに直接的なシグナルを与えることを意図したものではありませんが、利上げについては明らかに別のより厳しい検証が必要です」とくぎを刺している。

(H・N)


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