情報戦、日本は無防備=斎藤孝道・明大教授 2025年08月02日 14時30分

ロシアや中国は自国の利益のために偽情報を拡散する「影響工作」を行っているとされ、日本でも7月の参院選で外国勢力からのSNSを通じた世論介入が指摘された。介入の意図や背景、対策の必要性について、明治大サイバーセキュリティー研究所の斎藤孝道教授に聞いた。
―外国からの選挙介入をどう把握するか。
SNSやメディアを駆使する情報戦は痕跡を残さないため、明確な証拠がない。ポイントはナラティブ(物語)だ。例えばロシアの場合、西側諸国にウクライナ支援をさせないという政治目的があるため、日本の世論に対して支援への懐疑論を投げ掛ける。そうしたナラティブを複数作り、メディアやSNSを活用して展開することで、認知誘導を図っている。
ロシアは従来、欧州を中心に多くの情報戦を展開している。サイバー空間だけでなく物理的工作も合わせて扇動的な情報を流す。まさに情報戦は軍事戦略の一環で、安全保障だ。
―情報戦は各国が展開している。
米国、中国、台湾、欧州などの各国や地域が行っている。安保戦略に加え、自国の政策をPRするプロモーション工作も行われている。
―対策は。
まずは情報戦が行われているということを知るべきだ。情報は非常につかみどころがないが、一度定着し、拡散すると手が付けられなくなる。われわれは多くの人が信じているものを信じてしまう傾向にある。影響工作には高度な技術が使われており、実際に行われていても気付けないことが多い。
対策には各国が苦労している。根拠法がなければ取り締まりや捜査ができないため、まずは法整備が必要になる。今の日本は無防備で、狙い撃ち状態だ。
―ロシアはなぜ日本を狙うのか。
日本は国際秩序の中でメインプレーヤーとみなされておらず、第一の標的ではない。ただ、ロシアは日本に影響工作を仕掛けて同盟国・米国と引き離し、米国の弱体化を図ろうとしている。現在ロシアによるウクライナ侵攻はこう着状態にあり、選挙介入を含めた情報戦は今後も展開されるだろう。