行革に重点、全方位外交は踏襲=共産党書記長就任1年―ベトナム 2025年08月02日 15時09分

ベトナム共産党のトー・ラム書記長=2024年10月、ハノイ
ベトナム共産党のトー・ラム書記長=2024年10月、ハノイ

 【ハノイ時事】ベトナム共産党のグエン・フー・チョン書記長の死去を受け、同国の最高指導者としてトー・ラム書記長(68)が就任して3日で1年。中央省庁や地方行政機構の再編、民間企業の活性化など経済の効率化に重きを置く政策を矢継ぎ早に打ち出した。一方で、中国、米国、ロシア各国を順に訪問するなど大国との良好な関係を維持する全方位外交は前政権を踏襲している。
 トー・ラム氏は公安省でキャリアを積んできた。共産党の最高指導機関である政治局のメンバーに、公安省出身者や郷里にゆかりがある人物を任命。7月にはグエン・スアン・フック元国家主席らに対し、党の全ての役職を解任する処分が下された。2026年の共産党大会での続投を見据え、体制固めを着実に進めているもようだ。
 内政面では、ハノイとホーチミンを接続する南北高速鉄道の推進や原子力発電所の再開発を決定。また、行政機構の再編に着手し、中央省庁・機関や、地方の省・市の統合を実施した。加えて、民間経済の発展に向けた決議を出し、経済の重要な原動力として民間部門を位置付けた。
 ベトナム情勢に詳しい世界政経調査会の今村宣勝上席研究員は「前書記長の色を払拭し、経済合理性や効率的な発展といった自分の色を出そうとしている」と分析する。
 ベトナムが30年に共産党設立100年を迎えるのを前に、ラム氏はさらなる躍進に向けた「新しい時代」を掲げる。45年までの先進国入りを目指しており、一連の政策はそのための布石と目されている。
 ただ、現地のある日本企業関係者はこうした取り組みを歓迎する一方、「日々状況が変わる」とも指摘。企業活動の継続性には政策の一定の安定性も求められると話した。
 一方、外交面では、ラム氏は書記長就任直後の24年8月、最初の外遊先として中国を訪問。同年9月には国連総会出席のため米国を訪れ、25年5月にはロシアも訪問した。相互関税を巡る交渉ではトランプ米大統領との電話会談などを通じて早々に合意した。米中対立が激化する中でも一方への肩入れを避けており、今村氏は「今まで通りの全方位外交、外交の多元化、多様化を続けている」とみる。 

注目ニュース