EU、ロシアの世論操作を警戒=選挙控え欧州議員に資金提供か 2024年04月15日 14時31分

 【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)が5年に1度の欧州議会選挙を6月に控え、ロシアによる世論操作への警戒を強めている。欧州議会議員を含む複数の政治家がロシアから資金供与を受けていた疑いも浮上。ベルギー当局は「親ロシア派のネットワーク」が欧州議会に介入しているとして、捜査を始めた。
 欧州議会では2022年、中東カタールの関与が疑われる汚職事件が起きた。新たな疑惑を受け、複数の会派から調査を求める声が上がっており、EUは17、18両日の臨時首脳会議で対応を協議する方向だ。
 チェコ政府は3月27日、ニュースサイト「ボイス・オブ・ヨーロッパ(VOE)」と関係者2人を制裁対象に指定し、資産を凍結すると発表した。チェコの情報機関によると、ロシアがVOEに資金を提供し、コンテンツを直接管理。VOEはロシアのウクライナ侵攻について、同国を米欧が支援しているため長引いていると主張していた。
 チェコのメディアは、ドイツやフランスなどの複数の政治家がVOEから金銭を受け取っていたと指摘。米政治専門メディアのポリティコ欧州版は、ユーチューブに投稿されたVOEの動画50本を調べたところ、極右系の欧州議員16人が出演していたことを確認したと伝えた。一部議員は、侵攻の原因はウクライナにあるなどと訴え、同国のEU加盟に反対する論陣を張ったという。
 VOEはX(旧ツイッター)で、チェコ当局は主流とは言えない言説を「封じたいだけだ」と反発し、ロシアからの資金提供は「幻想だ」と否定したが、同国の工作への危機感は高まる一方だ。
 チェコに続き、ベルギーの検察当局も捜査に着手。AFP通信によると、寄付や融資などの形で複数の欧州議員に便宜供与を図った外国人・外国組織を対象としている。ベルギーのデクロー首相は今月12日の記者会見で、ロシアの狙いについて「(議会選で)より多くの親ロシア派候補を当選させることだ」と強調し、警戒感をあらわにした。 

海外経済ニュース