遺族「安全な社会を」=セウォル号沈没事故10年―韓国 2024年04月16日 06時34分
【ソウル時事】韓国南西部の珍島沖で旅客船セウォル号が沈没し、修学旅行中の高校生ら304人が死亡、行方不明となった事故は16日、発生から10年を迎えた。遺族らは15日、海外メディアと会見し「惨事の再発を防ぎ、安全な社会をつくってほしい」と訴えた。
事故で当時16歳の娘を失った母親の朴貞花さん(57)は「ウンジョン(娘)は薬剤師になるのが夢で一生懸命に勉強していた。私に似ず背が高く、今生きていればきれいな女性になっていたのではないか」と涙をこらえた。「母と娘が手をつなぎ買い物をして歩く姿を見るとうらやましく、娘を恋しく思う」と吐露した。
金鍾基さん(58)は当時17歳の娘、秀眞さんを亡くした。「秀眞は三人姉妹の末娘で、親やお姉さんの話をよく聞く優しい子だった。末っ子だから本人のやりたいことを全部やらせてあげようと家族で話していたが、短い人生しか生きられなかった」と悔やんだ。
金さんは「10年がたち他の子どもたちが成人となり、自分のやりたいことを頑張っているのを見ると、娘がどんな大人になっただろうかと想像する」と明かした。
事故後、韓国社会の安全意識の向上が呼び掛けられたが、2022年10月にはソウルの繁華街、梨泰院で159人が死亡する雑踏事故が発生した。金さんは「私たち家族は(沈没事故の)真相の究明と責任者の処罰を求め、安全な社会のために努力してきたが、梨泰院の惨事が起き、むなしさと防げなかった国への怒りを感じた」と語気を強めた。
沈没事故は、船の改造や貨物の過積載、船員の操舵(そうだ)ミスが重なり発生し、避難誘導や当局の救助活動にも不備があったとされる。乗客を残して逃げた船長らが殺人罪などで有罪判決を受けた。遺族は当時の朴槿恵大統領の事故対応に関する資料の公開を求めている。